砂金の調査記録(10)――岡山県美作市の砂金

日本においてどの川で砂金が採れるのかという本研究所のフィールドワークの調査報告です。

今回は、岡山県美作市の砂金の産出状況に関する調査を行いました。

岡山県の砂金産出状況

以前、砂金の調査記録(3)――岡山県東部の河川をめぐるのページで取り上げたように、岡山県から西側の地域に入ると砂金が極端に少なくなってしまうということが挙げられます。

また、砂金の調査記録(5)――兵庫県佐用町の千種川流域の砂金を探るにて報告したように、兵庫県最西端の佐用町を流れる佐用川では砂金が採れることが分かっています。

今回の調査では、佐用町の西側にある岡山県美作市の「吉野川」における砂金の産出状況の検証を行いました。

岡山県美作市の砂金

岡山県美作市を流れる「吉野川」は、岡山県北東部に位置する岡山県西粟倉村若杉峠を水源とする吉井川水系の一級河川です。

吉野川は美作市南方の岡山県赤磐市において「吉井川」に合流しますが、今回の調査ではその合流前の美作市の吉野川で砂金採集を試みました。

具体的な場所としては、「JR美作江見駅」の西側にある「江見浄化センター」のすぐ南の河川敷です。

川岸から河川敷まではコンクリート製のスロープも設けられているためにアプローチも非常に容易で、ここでそれなりの量の砂金が採れるのであれば砂金採集のためのうってつけの場所と考えられます。




吉野川(岡山県美作市)の周辺環境

この河川に広がっている岩石を観察すると、数多くの基盤岩が広がっていることが見て取れます。



吉野川(岡山県美作市)の基盤岩

基盤岩の割れ目には水草が生えているため、その根本に含まれる土砂を洗浄し、そこに砂金が含まれるかどうかの検証を行いました。

ただ、その土砂をパンニングしたところ、そこに含まれている砂鉄(黒色の砂)の量が極端に少ないという印象を受けました。


土砂の中の砂鉄(黒色の砂)

これまでの経験として、砂金が採れる河川の土砂を洗浄するとそれなりの量の砂鉄が存在し、砂金はその下部に見られることがほとんどです。

しかし、吉野川の土砂を洗浄するとそもそもの砂鉄が極めて少なく、それは上流からの鉱物の供給がもともと少ないことが考えられます。

このポイントの土砂を何度かパンニングしたところ、以下のような0.1mm程度の非常に微小な砂金が採集できました。


吉野川(岡山県美作市)の砂金

今回の調査では、1時間ほどかけて上記の砂金が1粒のみ発見できたという結果に終わりました。

さらに時間を費やせば砂金は見つかる可能性はありますが、このポイントでは「頑張れば砂金が集められる場所」としての意味よりも、「砂金が採集可能な場所」という資料的価値に意義があるような場所だといえるでしょう。

砂金採集に何を求めるか

私のように何年も砂金採集を続けていくと砂金が採れるポイントに関する知識も深まってきますし、それにともないより多く砂金を集めるための手法や道具の収集も進んでいきます。

そうなると、当然、「より効率的に多量の砂金を集めるためにはどこでどのようにすればよいのか」が分かるようになってきます。

ただ、そのように「砂金をより多く集めること」が目的となっていくと、やがて「砂金が採れるのは当たり前」という感覚に陥り、砂金が採れた時の感動は確実に失われていってしまいます。

今回の調査では0.1mmサイズの非常に小さな砂金しか採集できないという結果に終わっていますが、私が砂金採集を始めた当初は何時間もの労力をかけ、たとえ0.1mmの砂金であってもそれが発見できたときには飛び上がらんばかりの感動を覚えていました。

当研究所で「どのポイントであれば砂金が採れるのか」という砂金の調査にこだわり続けているのは、砂金に限らず鉱物や化石を自分自身で発見できた時の感動や喜びを忘れないためというある種の戒めの意味も込められているといえるでしょう。