砂金の調査記録(11)――鳥取県千代川流域の砂金

日本においてどの川で砂金が採れるのかという本研究所のフィールドワークの調査報告です。

当研究所ではこれまでにも岡山県以西の河川で砂金が産出されるかどうかについての検証を続けてきました。

それらの調査経緯については、砂金の調査記録(3)――岡山県東部の河川をめぐるや、砂金の調査記録(5)――兵庫県佐用町の千種川流域の砂金を探るおよび砂金の調査記録(10)――岡山県美作市の砂金の各ページを参照していただければと思います。

その結果、岡山県では兵庫県西端から岡山県東端までの地域において砂金が採集できるのではないかと考えられます。

以上の検証結果を受け、今回は兵庫県西部と岡山県東部の双方の県境に接している鳥取県における砂金の産出状況の検証を行いました。

鳥取県千代川の砂金

「千代川」(せんだいがわ)は、鳥取県智頭町を水源として鳥取県鳥取市を経て日本海に流れる一級河川です。

今回の調査ではその上流に位置する「用瀬」(もちがせ)地域に見られる基盤岩で砂金採集を試みました。

具体的な場所としては、「もちがせ流しびなの館」の北東側の河川敷です。

千代川の河川を観察すると白色の岩石が数多く見受けられ、この地域に特有の「花崗岩」が多く含まれていることが見て取れます。



千代川(鳥取県鳥取市)の周辺環境

また、河川敷の基盤岩には多数のひび割れがあり、その上部には水草が生えている場所が散見されました。



千代川(鳥取県鳥取市)の基盤岩

水草とその下部に含まれる土砂を洗浄すると、以下のような1m程度の砂金を採集することができました。


千代川(鳥取県鳥取市)の砂金

採集中に水草の根っこに付着する土砂と基盤岩の下部に含まれている土砂を比較したところ、基盤岩の土砂の方に砂金が含まれている状況が見受けられました。

先にも触れたように、このポイントにおける基盤岩は花崗岩でできており、そのひとつの特徴として岩石の表面が非常になめらかであるという点が挙げられます。

そのような基盤岩に向かって上流から砂金が流れてきた場合、よほどの大きな亀裂やくぼみがなければ留まることなくさらに下流へ流されてしまう状況が考えられます。

そのため、この基盤岩で砂金採集をするためには基盤岩の下部の土砂にポイントを絞ってパンニングする必要があり、そのような砂金の含まれる土砂を的確に見つけることのできる中級者向けの場所だといえるでしょう。

八東川上流の砂金

また、今回の調査では千代川に向かって東方から流れ込む「八東川」(はっとうがわ)のさらに上流にあたる「舂米川」(つくよねがわ)で砂金採集を試みました。

「若桜町立 ゆはら温泉ふれあいの湯」の南方に位置する河川敷には以下のような基盤岩が存在しています。




舂米川(鳥取県八頭郡)の基盤岩

この基盤岩には数多くの亀裂が存在していることに加え、それらが河川に対して垂直方向に形成されていることから、上流から砂金が流されているのであればその亀裂の下部に砂金が滞留している可能性が考えられます。

早速、基盤岩の亀裂に見られる水草とその下部に含まれる土砂をパンニングしてみると、以下のような2~3mm程度の大きさの砂金を採集することができました。


舂米川(鳥取県八頭郡)の砂金

また、上記の大きさの砂金以外にもこのポイントにおける砂鉄と同程度の大きさの粉末形状の砂金も含まれており、大小様々な砂金を採集することができる場所だといえるでしょう。


砂鉄と粉末状の砂金

なお、このポイントの基盤岩を観察したところ、その地質的特徴としては「三郡変成帯」と呼ばれる結晶片岩でできていることが挙げられます。

三郡変成帯の岩石は三波川変成帯と同様の「高圧低温型」の特徴を有していることから、そこで組成された重金属が含まれている可能性が考えられます。

仮設と検証を繰り返す意義

今回の調査では鳥取県の千代川の上流域に見られる2箇所の基盤岩で砂金の採集を試みました。

その結果、そのどちらにおいても1~3mm程度の大きさの砂金が採れたことから、それらのポイント以外でも河床に基盤岩が存在する場所であれば砂金が採集できるのではないかとの予測が成り立ちます。

なお、砂金を採集する際の楽しみのひとつとして、それまでに自分の行ってきた試行錯誤の経験が自分にダイレクトに返ってくるということが挙げられます。

今回、2箇所のポイントを訪れて砂金採集を行った際、その滞在時間としてはどちらも30分前後にとどまっており、それほど大きな労力をかけることなく砂金にたどり着くことができました。

砂金の大小はあるものの、自分の狙った場所の土砂の中から砂金が発見できれば「自分の観察眼に間違いはなかった」という自信や満足感につながりますし、それがより短い時間で達成されたのであれば自分の砂金採集のレベルがアップしていることが実感できます。

当然、砂金が見つからなければ「自分の観察眼が未熟でポイントを見誤った」か、それとも「そもそも砂金が産出されない場所」というどちらかの結論に落ち着くわけですが、そのような仮設を立てて検証を繰り返すことは単に砂金を収集すること以上の楽しさや喜びを自分自身に与えてくれるものだといえるでしょう。