砂金と基盤岩との関係――岩石の風化と堆積
本サイトでも何度も取り上げているように、砂金を採る際に注目すべきポイントとしては、基盤岩とその割れ目というところになります。
このような割れ目には上流から流されてきた砂金の粒子が滞留していき、長い時間をかけて結合して砂金の粒としての大きさになっていきます。
今回は、このような砂金の粒子が溜まっていく基盤岩のなりたちとその役割について考えていくことにしましょう。
基盤岩にあるひび割れ
私たちは、通常、岩盤や岩石というものは固いものといったイメージを抱いていると思います。
たしかに、たとえ私たちが岩盤の巨大な岩石を手で割ろうとしても、とても割ることなどできるものではありません。
しかし、実際に砂金採りをしてみると分かるように、河川の川面にある岩盤というものには以下のような割れ目や筋というものがたくさん入っています。
基盤岩に生じる割れ目
砂金採りをするためにはこのような基盤岩のひび割れや割れ目といったものに注目する必要があります。
川で砂金を採集するひとつの方法としての「盤たたき」は、この基盤岩の割れ目や筋の底にある土砂を集めてパンニングするものです。
では、このような岩盤や岩石のひび割れはどのようにしてできるのでしょうか。
実は、川にある岩盤や岩石というものは、長い時間をかけるとそこにさまざまな作用がはたらくために自然と割れてくるという性質があります。
岩石に対する作用として大きなものとしては、風化と大地の断層運動によるものが挙げられます。
河川にある岩石は常に太陽の熱にさらされていることに加えて風雨の影響を受けています。
そのため、岩石は常時はたらいているこのような温度変化によって膨張と収縮を繰り返し、割れやすくなってくるのです。
また、そのような岩石に対して周囲の断層運動や地震などで地層が動くと、そのときに岩石にかかった力によって岩石にひび割れや筋が生じてくるわけです。
さらに、岩石は冬を越すときに表面が剥がれやすくなるという性質もあります。
以下の画像は流紋岩でできた基盤岩ですが、表面の白っぽい部分はすぐに剥がれやすくなっています。
剥がれた基盤岩の表面
これは冬の間に岩石の細かい隙間に水が入り込み、周囲の温度差によって膨張と収縮を繰り返すことで自然と剥がれるような風化作用を起こしてきます。
このように、いかに固い岩盤や岩石といっても、長い年月による風化や断層運動という作用によってそこには簡単にひび割れなどが自然に生じてくるわけです。
砂金の動きと基盤岩の役割
岩盤における割れ目の部分には、川の上流から流されてきた砂金の粒子が溜まっていくため、いわば自然にできた砂金のトラップとしての役割を果たすことになります。
ただ、ここで砂金が川の上流から流されると簡単に説明していますが、金という鉱物は比重が大きいため、ちょっとやそっとの水の流れではほとんど動くことはありません。
どれくらいの水流があると砂金が動いていくのかというと、台風や豪雨で川に洪水が発生し、川の水が満杯になったり堤防が決壊したりしそうなぐらいの水の勢いがあってはじめて動くというレベルのものです。
砂金は洪水レベルの川の水流で動く
金がこのような水の流れに乗ると、金はより下流に流されていき、やがて基盤岩の割れ目の底に引っかかってとどまることになります。
ここに挙げた金の比重という特徴から考えると、基盤岩の後ろ側に鉄でできた釘や針金といったものがとどまっているところが砂金が溜まりやすいポイントになるといえます。
この基盤岩の裏側に入り込んだ鉄くずが砂金を探すときの目印になることについて以下の動画で説明をしていますので、ご覧ください。
基盤岩の裏側の鉄くずと砂金のポイント
(画像をクリックで動画を再生)
河川に見えている基盤岩のうち、このような場所は砂金のたまり場になっている可能性が高いと考えることができます。
また、次の写真では、基盤岩の裏側に錆びた釘や針金が入り込んでおり、さらにその周辺が赤茶けた色をしていることが分かります。
基盤岩の裏側にある錆びた針金
この赤茶けた色は何かというと、ここに落ち込んだ釘や針金といった鉄くずがそのまま錆びていき、その錆の成分が周囲に広がっていったものです。
ということは、この針金は長い時間この場所から動かずに錆びていったことをあらわしており、鉄よりも比重の大きい金はこの鉄くずのさらに下の部分にあるという予測を立てることができるわけです。
以上のように、基盤岩の割れ目は年月の経過とともに自然に生じてきますので、川の上流から流されてきた砂金が基盤岩の割れ目に引っかかってはそこで溜まり、また洪水などの水流が発生したときには再び動いて流されて下流の岩盤の割れ目に溜まるということを何度も繰り返していくことになります。
岩石と鉱物の特徴を知る
地学を学んできた私からすると、時間の経過とともに基盤岩や岩石にひび割れができてくるのはある意味当たり前なのですが、私が一般の方に砂金の採り方を指導する際に岩石のひび割れをバールで掘り起こす様子を見せると、岩石がそのように簡単に割れることに対してみなさんが一様に驚かれます。
また、私が川で砂金が出るポイントを的確に示すことについても、「なぜ砂金がそこにあることが分かるのですか?」という風によく驚かれます。
ただ、今回取り上げたように、岩盤の割れ目のでき方や川における砂金の動き方というものを考え合わせると、砂金が溜まるポイントというものは見当をつけやすくなるものです。
川で砂金が採れるポイントを探るというのは難しく思われそうですが、岩石というものと砂金の鉱物的な特徴およびその理屈を知っておけば、当たり前以外のなにものでもないということになるわけです。