砂金の調査記録(6)――千種川流域の砂金の供給源を検証する

日本においてどの川で砂金が採れるのかという本研究所のフィールドワークの調査報告です。

今回は、兵庫県西部地域の千種川流域の砂金の産出状況について、その供給源を探る調査を行いました。

千種川本流域の砂金

千種川は兵庫県西部地域ではもっとも大きな河川であり、前回の「砂金の調査記録(5)――兵庫県佐用町の千種川流域の砂金を探る」のページで検証を行った佐用川と合流した後、赤穂市まで流れ込んでいます。

今回の調査では、佐用川との合流点よりも前にある千種川本流の上流域を探索し、砂金が採れるかどうかを検証しました。

具体的な場所としては、久崎駅(智頭急行智頭線)の北部にあたる河川敷です。

この場所では河川の両岸をつなぐ橋脚のところに以下の写真のような多数の基盤岩が顔を出しています。




千種川上流域の基盤岩

ここで早速、砂金がありそうなポイントを探してみましょう。

これまでのセオリーどおり、砂金は比重が大きいことから鉄や鉛などの重金属がその目印となります。

この周辺の基盤岩を探ると、以下のような鉄のボルトが落ち込んでいる割れ目を見つけることができました。


鉄製のボルトを含む基盤岩の土砂

この割れ目に溜まっている土砂を洗浄すると、なんと3mmぐらいの大きさの砂金を見つけることができました。




千種川上流域で発見された砂金

この砂金が出てきたことで、千種川でも砂金が採れることが判明するとともに、その上流からは砂金の粒子が流されてきているのではないかという仮説を立てることができます。

そのため、今回はこの場所から千種川の上流をさかのぼりながら、砂金がどこから運ばれてきているのかを検証することにしました。

千種川の上流と支流を検証する

河川をさかのぼる際にポイントとなるのは、その合流地点付近で基盤岩を探し出して、そこでどちらに金が含まれているかを検証してみて、どちらの河川から金が供給されているのかを判断することです。

先に検証した千種川のポイントの上流をさかのぼっていくと、兵庫県佐用郡佐用町中島地区の近辺において千種川の本流とそこに東側から流れ込んでいる「志文川」(しぶんがわ)という河川が合流しています。

この下流側から先程の砂金が見つかったということは、このどちらかの河川から金が運ばれてきたという仮説が成り立ちます。

そこで早速このどちらの河川から砂金が来ているのかを検証しました。

しかし、結論を先に述べてしまうと、この付近を含めてさらに上流に存在する以下のような基盤岩が顔を出しているポイントを何箇所か探っていったのですが、いずれの河川からも砂金を発見することはできませんでした。



千種川本流上流域の基盤岩

千種川の上流域に砂金のかけらすら見つからなかったという事実は、千種川の上流域からは砂金が運ばれてきていないということを示しています。

さて、そうなると、一番最初に私たちが発見した砂金はいったいどこから来たものなのかという疑問が出てきます。

そこで一番最初に私たちが砂金を見つけた久崎駅周辺のポイントに戻って、再びこの場所で砂金が出るかどうかを検証しました。

その後、最初とまったく同じ方法で砂金が含まれているであろう基盤岩の土砂を洗浄してみたものの、砂金を見つけることができなかったのです。

結局、私たちが最初に見つけた3mm程度の砂金がどこから流れ込んできたのかという疑問が生じることとなったのです。

仮説と検証の大切さを知る

今回の調査では千種川の最初に砂金が採れたポイントを起点として上流の河川を行き来しながら砂金が溜まっているであろう基盤岩のポイントをめぐって供給源をたどっていったのですが、千種川の上流の河川ではいずれも砂金を見つけることはできませんでした。

ただし、私たちが最初に砂金を発見したことは事実ですので、この食い違いはどこから生まれたのかを考える必要があります。

現状、私たちの仮説としては、以下の地図を見れば分かるとおり、千種川と佐用川は久崎駅の南側で合流しています。

前回の調査では佐用川には砂金が発見されていますので、このことをふまえると、かつて佐用川の河川がもう少し上流のところで千種川と合流しており、そのときに流されてきた砂金が最初のポイントのところで発見されたのではないかという予測がなりたちます。

以上のように、今回の調査では千種川の上流域には砂金が見つからなかったという残念な結果に終わりました。

しかし、ひとつの砂金が見つかったことからそれがどのような経路をたどって眼の前にあらわれているのかを考えることも砂金をより効率的に見つけるために必要な思考法だといえるでしょう。