砂金の調査記録(7)――兵庫県美方郡香美町の砂金
日本においてどの川で砂金が採れるのかという本研究所のフィールドワークの調査報告です。
今回は、兵庫県北西部にある矢田川流域の砂金の産出状況に関する調査を行いました。
兵庫県美方郡香美町の砂金
「矢田川」(やだがわ)は兵庫県養父市に位置する「氷ノ山」(ひょうのせん)に端を発し、日本海に面した「香住町」(かすみちょう)に向かって流れている河川です。
この矢田川の上流域にはかつて金山があり、そこで金を産出していた歴史があったとのことです。
今回の調査では、その矢田川の中流域にあたる「兵庫県美方郡香美町小代区石寺」付近を探索し、砂金が採れるかどうかを検証しました。
具体的な場所としては、以下の「荒霊神社」の東側に位置する矢田川の河川敷です。
この場所の上流には小型の堰が設けられており、その下流側に以下の写真のような多数の基盤岩が顔を出しています。
矢田川中流域の基盤岩
この基盤岩にはいくつもの割れ目があることから「盤たたき」を行い、その中の土砂を取り出してパンニングを試みました。
基盤岩と盤たたきで出てきた土砂
約1時間ほどの作業を行った結果、下図に示したような約0.1mmほどの砂金を2粒だけ採集することができました。
矢田川の砂金
今回の調査では矢田川の上流域にかつて金山があったとの情報の下、その中流域付近にて砂金採集の検証を試みましたが、正直、砂金の産出量としては乏しいものとの印象が見受けられます。
矢田川の上流にはいくつかの堰が設置されている可能性もあることから、上流からの砂金が途中でせき止められて下流に向かって流れてきていないことも考えられます。
また、矢田川において上記のような砂金が採集できるという事実そのものについては資料的価値があるものと判断できます。
ただし、中流域においてその大きさの砂金が採れることを考えると、より多くの砂金を採集したい場合には他の場所が適当ではないかという捉え方もできるのではないでしょうか。
調査手法の洗練
本研究所では、「私たちの身の回りにある河川の中で、どの川であれば砂金が採れるのか」というフィールドワークを継続的に行っています。
その検証を重ねていくと、「河川のどのポイントに砂金が集まっているのか」「この辺りに砂金があるだろう」という観察眼が養われていきます。
そうすると、「その河川のどこに砂金が存在するか」が比較的短い時間で分かるようになり、その上で検証を行うことができるようになります。
以上をふまえ、本研究所では1時間前後の時間でどれほどの砂金が採集できるのかをひとつの目安にしています。
砂金採集そのものはかなりの重労働を強いられる面もありますので、身体的・精神的に無理のない範囲で砂金採集を行うことを考えると、「1時間をかけてどれくらいの成果が得られるのか」を判断することも砂金採集をホビーとして楽しむための大切な要素だと考えられます。