砂金の調査記録(4)――徳島県吉野川流域の砂金を探る

日本においてどの川で砂金が採れるのかという本研究所のフィールドワークの調査報告です。

今回は、四国の徳島県の吉野川まで足を伸ばして、砂金の産出状況について調査を行いました。

徳島県三好市の砂金

吉野川は高知県に端を発し、徳島県を西から東に向かって紀伊水道に流れ込む四国でも有数の河川です。

その吉野川の上流にある支流のひとつとして「銅山川」があり、その周辺では古くから砂金を採集していたという史実が残されています。

銅山川の上流には「層状含銅硫化鉄鉱床」(そうじょうがんどうりゅうかてっこうしょう/キースラーガ―)とよばれる鉱床があり、昔から銅を取るための銅山が数多く存在していました。

特に、四国の銅山としてもっとも有名な「別子銅山」もこのタイプの鉱床でできており、この鉱床に含まれる重鉱物を精錬によって取り出すということが行われていました。

この銅山と金というものには深い関係があることから、今回の調査ではこの銅山川で砂金が採られていたという史実にもとづいて、砂金の産出状況を検証しました。

銅山川における採集ポイントとしては、徳島県三好市山城町大野という場所になります。

銅山川のこのポイントには、基盤岩の上にたくさんの水草が生えています。



銅山川の基盤岩

早速、この水草に対して何箇所か草の根引きを行い、砂金が含まれているかどうかを検証しました。



銅山川の基盤岩と水草

通常、砂金採集をするときにはこの草の根に含まれている土砂を洗ってパンニングをすれば砂金があるかどうかが分かるのですが、この銅山川で砂金を採集するときには他の河川とは違い、ひとつだけ注意点があります。

それが「鉱滓」(こうさい/スラグ)というものの存在です。

銅山川における砂金採集の特徴

銅山川で草の根引きをしてパンニングを行うと、以下のような黒い石の塊をたくさん見ることができます。



パンニング皿に最後まで残る「鉱滓」

これは鉱滓といって、かつて銅山川の上流にあった銅の鉱山において精錬によって重鉱物を取り出すということを行っており、その際に不必要な鉱物の残りかすが固まった金属の塊のようなものです。

この鉱滓は銅山で採掘した鉱石を精錬するとできてしまうのですが、当時の人びとはそれができるたびに川に流してしまったため、銅山川の土砂にはこのような鉱滓が現在でも残っており、いたるところで見ることができます。

当然、鉱滓は重鉱物の塊であるために比重が大きいため、パンニング皿でパンニングをしてもその底にずっと溜まり続けることになります。

銅山川で砂金採集をする際にはこの鉱滓が含まれてしまうために、通常の砂金採集とは違ってこの鉱滓を取り除く作業をする必要が出てくるというわけです。

ともあれ、この鉱滓を取り除きながら集めた土砂をパンニングすると、以下のような砂金をいくつか採集することができました。



銅山川で採集された砂金

大きさとしては、0.2mm~1mmといったところでしたが、かつての史実どおりに砂金を採集することができました。

砂金のポイントを探るための手がかり

今回は、吉野川上流の銅山川周辺で砂金の採集をしていたという史実にもとづいて砂金の調査を行いました。

史実以外にも、「銅山川」という名称はその地域に銅山があったこととつながりがあるものですし、鉱物としての生成過程からも銅と金には深い関係を読み取ることができます。

以上のように、歴史的な史実と地質的なつながりを重ね合わせることからも砂金の採集できるポイントというものを探る手がかりとすることができるといえるでしょう。