結晶片岩の産地でさまざまな変成岩を採集する
地学という領域ではさまざまな岩石が取り上げられて考察の対象となっていますが、数ある岩石の中でももっともバリエーションに富んでいるのは「変成岩」だと言われています。
今回は、変成岩の中でも特に変成度の高い「結晶片岩」の産地を取り上げ、そこで発見できるさまざまな岩石をご紹介しましょう。
「鹿森ダム」上流域に見る結晶片岩
変成岩とはこちらの「変成岩と変成作用――岩石の構造変化を知る」のページで取り上げているように、ある岩石が温度や圧力の影響を受けて変化したものです。
その変成岩の中でもマグマの熱によって変成作用を受けたものは「接触変成岩」と呼ばれ、プレートの圧力によって変成作用を受けたものは「広域変成岩」と呼ばれ、その中でもより圧力の高い場所で変成を受けた岩石は結晶片岩といわれます。
今回、ご紹介するのは愛媛県新居浜市の南部にある結晶片岩の産地で、日本列島の中央構造線に沿った「三波川変成帯」に連なる場所といえます。
具体的には、以下の「鹿森ダム」のさらに南方の足谷川周辺になります。
この鹿森ダムにはループ橋が架けられており、非常に迫力のある景観となっています。
鹿森ダムのループ橋
このループ橋をさらに南方に向かい、トンネルを3つばかり越えたところに河床に降りるための側道があります。
鹿森ダム上流の足谷川
このポイントにはたくさんの岩石が広がっており、その中にさまざまな変成岩が見られるのです。
採集された岩石のご紹介
では、実際に私がこのポイントで採集した変成岩の一例をご紹介していきましょう。
結晶片岩の中に見える縞模様
まず、上記の結晶片岩の中には縞模様が入っており、この地域の岩石が高い圧力で潰されたとき様子を見て取ることができます。
電気石(黒い放射状の縞模様が見える)
透緑閃石(陽起石)
白雲母を含む結晶片岩
パンペリー石(黄緑色の鉱物が鮮やかに見える)
紅簾石片岩
緑泥石片岩
黒雲母が含まれる結晶片岩
点文片岩(長石の結晶がモザイク状に広がる)
上記に紹介したように、このポイントでは少し見て回っただけでも色や形などのバリエーションに富んださまざまな変成岩を発見することができるのです。
この岩石の採集ポイントについては、以下の動画でも解説しているので、あわせてご参照ください。
結晶片岩の産地で変成岩に触れる
(画像をクリックで動画を再生)
さまざまな変成岩に触れる
変成岩にはさまざまなバリエーションが存在していますが、それは変成前の岩石やそこに含まれる鉱物の違いと、それがどのような温度や圧力などの環境に置かれていたかによって出来上がる変成岩の違いが出てくるものといえます。
今回紹介した鹿森ダム上流の採集ポイントではさまざまな変成岩を実際に手に取って観察することができます。
これまでまったく地学や岩石に触れてこなかったという人でも、この採集ポイントでは同じ岩石でも色や形がいろいろな条件で変化していく様子を知ることができるという意味で、非常に有意義な場所といえるでしょう。