マグマから生まれる岩石――火山岩と深成岩
前項までで火山とマグマがプレートの生成とその動きに関わってくることを説明してきました。
このマグマは私たちが目にする岩や石を生み出す元となっているものであり、その条件によってさまざまな岩石ができていきます。
今回は、マグマからどのような種類の岩石が生まれるのかについて見ていきましょう。
火成岩の種類――火山岩と深成岩
まず、マグマから生み出される岩石は一括りで「火成岩」(かせいがん)とよばれています。
この火成岩は、マグマの冷えて固まる環境や条件によって、「火山岩」(かざんがん)と「深成岩」(しんせいがん)に分かれていきます。
それぞれの名前があらわす通り、火山岩は火山の地上部分に出てきてできる岩石であり、深成岩は地中の深いところ、主にマグマ溜まりの周辺でできる岩石という特徴があります。
次に、この火山岩と深成岩はそれぞれの含まれている元素と鉱物の特徴によって主に3つずつ、合計で6つの種類に分けることができます。
火成岩の種類 | 代表的な岩石の名称 |
---|---|
火山岩 | 玄武岩 安山岩 流紋岩 |
深成岩 | 斑れい岩 閃緑岩 花崗岩 |
以上の6種類の岩石は代表的な火成岩ですが、当然ながら実際の岩石にはそれぞれの中間に位置するものもたくさん存在しています。
これらの火成岩に多く含まれている元素としては主に「ケイ素」(SiO2)があり、これは身近なところでいうとガラスの材質になっているものです。
また、火成岩には特有の「無色鉱物」および「有色鉱物」が含まれており、両方をあわせて以下の7種類が存在しています。
無色鉱物はその名の通り色がついていない白っぽい鉱物、有色鉱物は茶色や黒のといった色のついた鉱物で、これらの無色鉱物と有色鉱物およびケイ素の含有率から火成岩の識別を行うことが可能となります。
火成岩の識別方法
火成岩については、これまでの岩石の成分の分析結果から以下のような一覧表が作成されており、この表に当てはめることでおおよその分類ができます。
なお、表の中で色のついていない部分が無色鉱物(全3種)、色のついている部分が有色鉱物(全4種)をあらわしています。
実際に火成岩を見分ける場合、表のケイ素(SiO2)の量に注目すると、その量が増えれば増えるほど《流紋岩》や《花崗岩》のような白っぽい岩石になる傾向があります。
同様に、ある火成岩に無色鉱物が多く含まれていれば《流紋岩》や《花崗岩》のような白っぽい岩石になり、逆に有色鉱物が多く含まれていれば《玄武岩》や《斑れい岩》のような黒っぽい岩石として識別することができます。
また、火山岩であっても深成岩であってもその中に含まれている鉱物の組成としては共通しています。
たとえば、《玄武岩》や《斑れい岩》は岩石としての違いはあるものの、上表に示されているように、どちらの岩石にも「斜長石」「輝石」「かんらん石」が含まれており、成分としてはどちらも非常に似通っています。
それでは火山岩と深成岩をどのように見分けるかというと、結晶の大きさの違いに注目します。
深成岩はマグマが地下でゆっくりと冷えて固まったものですので、結晶が比較的に大きくなりやすいという特徴があるのに対し、火山岩はマグマが急速に冷やされて固まるために結晶が大きくなりにくい、すなわち小さな結晶の粒がたくさん含まれた岩石になるわけです。
以下、それぞれの岩石の具体例とその見分け方を紹介していきましょう。
玄武岩/斑れい岩
まずは、有色鉱物の多い「玄武岩」と「斑れい岩」から見ていきましょう。
この2つの岩石は成分としては共通しており、有色鉱物が多いために黒っぽい岩石になります。
玄武岩
なお、玄武岩については兵庫県では玄武洞がとても有名で、実際にその岩石の名前もここに由来しています。
また、地球上でもっとも多い火成岩は、玄武岩になります。
その理由は単純で、中央海嶺をはじめとする海底の火山が地球上の火山の大部分を占めており、そこでできる岩石がマグマが海底で急速に冷やされてできる玄武岩だからです。
さて、次に玄武岩と同じ成分でできている深成岩の斑れい岩を見てみましょう。
斑れい岩
玄武岩に比べると中に含まれている結晶の粒の大きいものを見て取ることができます。
深成岩は地中でゆっくりと固まっていくために結晶が大きくなり、そこに違いが出てくるというわけです。
流紋岩/花崗岩
次に、有色鉱物の少ない白っぽい火成岩である「流紋岩」と「花崗岩」を見てみましょう。
写真で見たとおり、流紋岩は白い岩石で、流れ模様や縞模様が入っているのが特徴です。
流紋岩
花崗岩は、お墓の御影石としてもよく使用されていますので身近なところで見ることも多い岩石です。
この花崗岩は流紋岩と同じ成分ですが、深成岩ですので黒っぽい大きな結晶を見つけることができます。
花崗岩
安山岩/閃緑岩
最後に、「安山岩」と「閃緑岩」を見てみましょう。
この2つの岩石は、火成岩の中でも中間に位置しているものですが、岩石のできた状況によって流紋岩や花崗岩に近いものができることもあります。
安山岩
安山岩はやや灰色っぽい色をしています。
閃緑岩
閃緑岩には緑色の大きめの結晶を見つけることができます。
安山岩と閃緑岩は見かけ上でさまざまな種類のものがあり、実際のフィールドで目にするとなかなか判断に困ることが出てくることもあります。
火成岩を識別する意義
火成岩についての解説と識別方法について解説してきましたが、これらの火成岩を識別することで、その地層がどこでどのような経路をたどって形成されたかという手がかりを得ることができます。
たとえば、ある地層に火成岩が含まれていればそこにマグマと火山の存在があったことが示されますし、また、深成岩が地表に出ているのであれば、その地層一帯が長い年月をかけて地表に隆起してきたといったことが分かります。
とはいえ、当然ながら、私たちの身の回りには火成岩以外にもいろいろな岩石がありますし、火成岩でもはっきりとは分類できない中間的な岩石も存在しています。
本格的な岩石の識別をするためには、火成岩以外の岩石についての知識も必要不可欠となりますが、それらについてはまた改めて取り上げます。