岩石の分類方法――肉眼で見分けるための基礎知識

私たちの身の回りにはいろいろな岩石が存在していますが、みなさんは「これは何ていう名前の石なんだろう?」と考えたことはないでしょうか。

地学はさまざまな岩石や化石、鉱物を扱う学問ですので、当然ながらその岩石が何かを見分ける方法が存在しています。

今回は、主に目で見て分かるレベルでの岩石を分類する方法とそのポイントについてご紹介していきます。

岩石分類のフローチャート

まず、地学で扱う岩石については、「火成岩」と「堆積岩」、「変成岩」という3つの種類が存在しており、本サイトでもそれぞれの岩石について説明をしています。

火成岩については「マグマから生まれる岩石――火山岩と深成岩」、堆積岩については「堆積作用と堆積岩――風化・侵食・運搬とのつながり」、変成岩については「変成岩と変成作用――岩石の構造変化を知る」のページでそれぞれ解説していますので、そちらもあわせて参照してください。

さて、これらの岩石のうち、もっとも見分けることが難しいものは変成岩になります。

その理由としては、変成岩というものはもともと火成岩や堆積岩だったものが圧力や熱の影響を受けて別の岩石に変化(=変成)しているために一見しただけでは判別が難しいことが多く、その変成岩が何なのかを正確に判別するためには中に含まれている変成鉱物を顕微鏡レベルで分析する必要があることが挙げられます。

この変成岩の分類を正確に行うことは、地学の教師として長らく岩石に携わってきた私でもかなりの難しさを感じる専門的な領域となっています。

ただ、そこまでいかなくとも、これまでの私の経験から岩石を見分けるやり方というものは存在しています。

以下の図は、主に火成岩と堆積岩を目で見て分けられるレベルで私が作成したフローチャートです。

このフローチャートでは1~12まで岩石の特徴を判定するための質問があり、それに沿って進んでいけば、身の回りにある岩石がおおよそどんなものなのかが分かるようになっています。

まず、《1.肉眼やルーペを用いて岩石中の鉱物の特徴が把握できる》については、その岩石の中に鉱物や結晶などがはっきりとした形として見えるかどうかを判断しています。

岩石の中にさまざまな大きさの粒子や結晶が見えるようであれば「YES」、逆に結晶が見えなかったり、岩石の全体が均一に固まっていたりして粒子の大小の区別ができないならば「NO」のルートになります。

次に、《2.大きい粒子と小さい粒子が明らかに区別できる》の質問については、先ほど判別した粒子の大きさが大小入り混じっていれば「YES」、そうでなければ「NO」となります。

《3.大きい鉱物の角がとれて丸くなっている》については、河川に流された岩石は川の水流によって回転することで摩耗して角が取れて丸くなっていくため、それを判別する質問になっています。

この条件に合致する岩石は水流によって流された堆積岩の可能性が高くなり、さらに《5.大きな粒子の間を小さな粒子が埋めている》場合は「礫岩」、粒子の大きさが均一であれば「砂岩」として判定することができます。

なお、5番の質問で角が取れていない岩石の中で《6.石英を多く含む》のであれば「流紋岩」、そうでなければ「安山岩」という火山岩として分類することが可能となります。

また、2番の質問に合致しない岩石のうち、《4.白い鉱物と黒い鉱物が区別できる》かどうかを見ることによって、火成岩の中の「深成岩」と変成岩の一種である「結晶質石灰岩」(大理石)を判別することができます。

その際、黒い鉱物と白い鉱物が含まれていれば、10~12番の質問に示したそれぞれの鉱物の含まれ度合いによって「斑れい岩」「閃緑岩」「花こう岩」が識別できるようになります。

ここで最初の質問に戻って、《1.肉眼やルーペを用いて岩石中の鉱物の特徴が把握できる》ような岩石でない場合、《7.岩石が全体が灰黒色である》かどうかをチェックします。

その岩石が黒っぽいものであれば、《8.割れ口がガラスに似ている》かどうかを判別してみて、ガラスに似ている場合は火山岩でガラス質が多量に含まれた「黒曜石」であり、そうでなければ「玄武岩」ということになります。

岩石が7番の質問にあるような黒っぽいものでなかった場合、《9.塩酸と反応して気体が発生する》かどうかをチェックすることで「チャート」か「石灰岩」かが分かるようになります。

石灰岩に含まれた炭酸カルシウムは塩酸と反応すると二酸化炭素が発生するため、このような判別方法が存在するわけです。

岩石の分類に関する心得

以上、岩石の見分け方について解説をしてきました。

実は、この岩石の分類方法は、かつて私が勤務していた高等学校において入学試験に課される理科科目の実験のテストとして出題したものになります。

その理科の実技試験では、以上に挙げたフローチャートに当てはめながら岩石を分類してもらうため、すべての種類の岩石を私の方で人数分用意するなどその準備に非常に労力がかかったことを覚えています。

岩石の分類というものは、その岩石に実際に触れてみてそれがどのような特徴や条件で構成されているものなのかという問題意識をもたないとなかなか難しいところがあります。

予想どおり、試験当日、受験生からは「え~!なにこれ!?」という驚きともため息ともつかない声があちこちから聞こえてきたわけです。

今回は岩石の分類の中でも比較的簡単な方法をフローチャートにして示していますが、これが実際のフィールドに出るようになると、その岩石を判別するにあたって何が決め手になるのかを自分で気づかないとまったく訳が分からない状況に陥ってしまいます。

たとえば、大学時代、私が指導教授の坂東先生とともにフィールドに出ていたとき、先生がある岩石を示して「板村君、これはどういう岩石だと思いますか?」と尋ねられたことがあります。

私なりにその岩石から読み取れそうなことを並べ立ててみたものの、最終的に先生の求める回答に到達することはできませんでした。

そのとき、坂東先生からは「松脂岩」(しょうしがん・ピッチストーン)が野外で判別できるかどうかが問われていたのですが、私自身の知識と経験不足および観察眼の至らなさということを痛感させられた出来事として印象深く記憶しています。

結局、その岩石が何なのかを判断するためには、その岩石だけを観察するのではなく、周囲の地層や岩体といった岩石の置かれている周辺の状況も含めて総合的に考えることが求められてくるわけです。

岩石を分類するということは、一見、皆目見当もつかないようなことに思われるかもしれませんが、その背景にはしっかりとした理屈が存在しています。

この岩石の分類を通して自分がどの部分に何を見出すことが重要なのかというそのきっかけが理解できれば、観察することの大切さとその目が養われるのではないかと考えています。

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