変成岩と変成作用――岩石の構造変化を知る

地層がどのような形で堆積しているのかを詳しく観察することで、その地層の年代や当時の周囲の状況をより詳細に推察することができるようになります。

さて、今回取り上げるのは、地学において扱う最後の岩石である「変成岩」(へんせいがん)です。

この変成岩が分かるようになれば岩石のすべての種類を知ったことになるのですが、実際に私たちが目にする変成岩はとても複雑かつ多様なパターンが存在しており、その識別に苦労するものでもあります。

変成岩の基本的なパターンを知るところから始めていきましょう。

変成岩と変成作用の種類

まず、変成岩とは何かということですが、これは一度形成された火成岩や堆積岩がマグマによる熱、あるいは地層やプレートの圧力を受けてその成分に変化が見られるような岩石のことをあらわしています。

たとえば、「大理石」というものがありますが、これはもともと石灰岩だったものがマグマの熱による変成作用を受けて岩石の内部構造が変化した変成岩で、正式名称は「結晶質石灰岩」といいます。

それぞれの変成作用については、以下の2つの区分があります。

変成岩の特徴としては、一度形成された岩石が熱や圧力によって中に含まれていた鉱物の成分が「再結晶化」しており、もともとの岩石とはまったく違ったものに見えることが挙げられます。

では、接触変成岩と広域変成岩のそれぞれについて、実例を見てみましょう。

接触変成岩(ホルンフェルス)

以下の岩石は、泥岩が熱変成を受けた接触変成岩で、泥質ホルンフェルスともよばれるものです。


接触変成岩(泥質ホルンフェルス)

この接触変成岩には、黒色の中に白い斑点のようなものを見て取ることができます。

これは菫青石(きんせいせき)という変成鉱物で、泥質の接触変成岩にはよく見られるものです。

なお、泥岩からできている泥質ホルンフェルスは元の泥岩よりも熱変成を受けることによって固い岩石となっています。

広域変成岩

広域変成岩は、地層やプレートの圧力によって変成を受けた変成岩です。

以下の広域変成岩は、特に結晶片岩とよばれるもので、藍晶石(らんしょうせき)という変成鉱物が含まれたものになります。


結晶片岩

結晶片岩の見かけ上の特徴としては、鉱物の組織が細く流れて筋の形になっていることが挙げられます。

この特徴は、プレートや地層の圧力によって鉱物の組織が押しつぶされて引き伸ばされているところから生じています。

変成鉱物の多形から見る変成岩の変成過程

変成岩を取り上げる際に必ず触れることになるのは、「変成鉱物」というものの存在です。

すでに説明したように、変成岩はマグマの熱やプレートなどの圧力によって変成を受けたものです。

その際、変成を受ける前の岩石の中にもともと含まれていた鉱物が結晶化します。

この変成岩によく見られる鉱物は変成鉱物とよばれており、この変成鉱物は同じ化学成分でできているにもかかわらず、熱と圧力の条件によって結晶の形がそれに応じて変化することが特徴です。

このように、同じ化学組成であっても条件によって結晶構造が変化する物質のことを「多形」(同質異像)といいます。

たとえば、鉛筆の芯に使われている炭素(C)は私たちの身近によくある元素ですが、それが温度と圧力の条件によって構造が変化するとダイヤモンドになるといったようなものです。

変成岩で取り上げられることの多い変成鉱物の成分としては、「アルミノケイ酸塩」(Al2SiO5)があります。

このアルミノケイ酸塩からなる鉱物は、熱と圧力の条件によって「紅柱石」「珪線石」「藍晶石」という3つの結晶体のどれになるかが知られています。

つまり、変成岩に含まれる変成鉱物がどんな形になっているのかを観察することで、その変成岩が変成を受けたときの状況を推定することができるのです。

以下の図では、各色の線にはさまれた鉱物の名称が条件によってそれぞれの結晶構造になることをあらわしています。


変成鉱物の変成条件

アルミノケイ酸塩の他、上図ではナトリウム長石(NaAlSi3O8)がより高圧の条件下だとひすい輝石(NaAlSi2O6)と石英(SiO2)に分解されて変成岩中にあらわれるということもあります。

そのため、変成岩にどのような種類の鉱物の結晶が含まれているのかを観察することで、その変成岩がどのような条件を経由してできたのかが分かるようになるわけです。

岩石の識別に関する心構え

以上で地学で扱う変成岩の概要を解説してきました。

ただ、実際に私たちが目にする岩石のバリエーションは実に多様であり、識別の難しいパターンというものはたくさんあります。

特に、変成岩はそこに含まれる化学成分と条件によって形成される結晶構造の種類が非常に多いため、それを識別できるようになるためには鉱物結晶の種類と条件などをあらかじめ細かく覚えておく必要があるといえます。

とはいえ、長らくフィールドでさまざまな岩石を見てきた私自身でも、変成岩の識別の際にはそこに含まれている鉱物の結晶名を羅列するしかできないような変成岩もあります。

例を挙げるならば、愛媛県の関川上流に産出する「含(がん)ざくろ石・角閃石片岩」、その意味としては「ざくろ石を含む結晶片岩がさらに変質した岩石」のような鉱物名でしか表現ができないものがあります。


含ざくろ石・角閃石片岩

このように、岩石というものを識別する際にはその前提となる変成鉱物などの知識も必要ですが、それ以上にその岩石だけですべてを判別しようとするのではなく、それがどの場所やどの地層から採取されたものかという手がかりも含め、その岩石の置かれた状況を全体で理解しようとする気持ちが大切だといえるでしょう。