堆積作用と堆積岩――風化・侵食・運搬とのつながり

地球の歴史を振り返ってみると、地球の環境と生命の進化の歴史との間には深いつながりがあり、その様子を地層から推定できることが分かりました。

実は、地層だけでなくそこに含まれている岩石についても、生物とのつながりを見て取ることができます。

今回は、そのような古代の生物と地層の運動によって生まれた堆積岩を取り上げ、その特徴について見ていきましょう。

この堆積岩が分かると、岩石の幅広さとその奥深さを理解して頂けると思います。

堆積物の発生

岩石については、以前、「マグマから生まれる岩石――火山岩と深成岩」のページでマグマから生まれた火成岩を取り上げましたが、当然ながら私たちの身の回りにある岩石はそれがすべてではありません。

堆積岩とはその名前のとおり、さまざまな物質や粒子が堆積、すなわち寄せ集まって固まってできた岩石のことをあらわしています。

では、このさまざまな物質や粒子がどこから来るのかというと、これには地球の表面にある山や岩石の「侵食」と「風化」、そしてそれらの「運搬」といった一連の流れが関係しています。

地表にある山や岩石は、河川の水や雨、風や波などによって侵食を受けて削られたり、光や熱によって風化したりすることによって細かい「礫」(れき)や「砂」、「泥」などの粒に砕かれていきます。

侵食や風化によって細かく砕かれた物質は河川の水や風によって「運搬」され、次第に低いところへ移動していきます。

このとき、水の流れや風がなくなってそれらの物質がある場所に溜まっていくことを「堆積」といいます。

このようにしてさまざまな物質が堆積した後、長い年月をかけて固まって岩石となったものが堆積岩になるというわけです。

なお、この堆積した物質が堆積岩になっていくはたらきのことを、地学では特に「続成作用」(ぞくせいさよう)とよんでおり、「圧密(あつみつ)作用」「脱水作用」「膠結(こうけつ)作用」という3つの段階があります。

要は、ある場所に集まった堆積物が堆積岩になるためには、強い圧力で固められるような状況や条件が必要になるということです。

堆積岩の種類と特徴

堆積岩はいろいろな物質や粒子が元になって形成されるもので、どのような物質や粒子が固まった岩石なのかによってその種類を分けることができます。

そのため、そこにどんな種類の堆積岩があるのかを知ることによって、その周辺でかつてどのようなことが起こったのかをある程度推測することができるのです。

堆積岩の種類は、以下の表に示したように、大まかに「砕屑(さいせつ)岩」「火山砕屑岩」「生物岩」「化学岩」「蒸発岩」の5つに分かれています。

種類 堆積岩の名称 成分・組成の特徴
砕屑岩 礫岩 2mm以下の粒子
砂岩 2~1/16mmの粒子
泥岩 1/16mm以下の粒子
火山砕屑岩 凝灰岩 火山灰の堆積物
凝灰角礫岩 火砕流の堆積物
生物岩 石灰岩 サンゴ、フズリナ、有孔虫の遺骸
チャート 放散虫の遺骸
石炭 炭化した植物
化学岩 石灰岩 炭酸カルシウム(CaCO3)の凝固
チャート ケイ素(SiO2)の凝固
蒸発岩 岩塩、石膏 水分が蒸発して形成

以上に挙げたとおり、堆積岩は名前がそれぞれの岩石の特徴をあらわしているため、比較的覚えやすいと思います。

なお、上表のうち、「石灰岩」と「チャート」が生物岩と化学岩の両方の分類に含まれていますが、これは生物の遺骸から組成されたものか、それとも純粋に化学的成分が沈殿などによってできたものかによって分類がされています。

ここで、堆積岩について私のコレクションからいくつか実例を見てみましょう。

礫岩・砂岩・泥岩

礫岩・砂岩・泥岩についてはそれぞれの名前のとおり、見た目の粒子の大きさから判断のしやすい堆積岩です。

まず、礫岩は以下の写真のように、岩石の中に大きい粒が見えます。


礫岩

次に、砂岩は表面に砂の粒のようなものを見て取ることができます。


砂岩

最後に泥岩は、砂岩に比べてより岩石の表面の粒が細かくなっています。


泥岩

なお、この泥岩には植物の化石が含まれています。

石灰岩・チャート

石灰岩とチャートは画像で見てもなかなか識別が難しい堆積岩です。

石灰岩の表面はややざらついている特徴がある堆積岩です。


石灰岩

チャートはガラス質でできており、通常の岩石と違って表面がツルッとした手触りであることが特徴です。


チャート

この写真のチャートには酸化鉄の成分が入っているために、赤色になっています。

これ以外にも、岩石に含まれている成分によってチャートは青色や黒色など、さまざまな色のバリエーションがあります。

なお、実際に私たちが目にする堆積岩の中には、上表の分類では見分けがつかないものも数多く存在しています。

その理由として、堆積岩がマグマの熱やプレートの圧力によってさらにその成分が変化した「変成岩」というものがあるからです。

この変成岩と岩石の変成作用を知るためには、その前提となる堆積岩の知識が必要となりますので、変成岩を学ばれる際にはぜひとも上表を参照してください。

堆積岩が示すもの

今回取り上げた堆積岩が識別できるようになると、それが含まれている地層がどのような場所にあったのかを知る手がかりとなります。

たとえば、ある地層を調べた際に、その中にある生物の化石が含まれていればその年代を測定したり生物の生きていた時代を調べたりすることで、その地層がどういう状況で目の前にあらわれたのかなどを検証することができます。

しかし、生物的な手がかりがない場合でも、生物岩の石灰岩が含まれていればそれはかつてサンゴやフズリナといった浅い海の底に生きていた生物からできている岩石なので、その地層が海の底にあったことを知ることができます。

また、ある地層に凝灰岩が含まれていれば、火山灰の存在から火山の噴火という事実を知ることもできます。

さらに、礫岩や砂岩、泥岩などの砕屑岩は、その地層が河川の運搬と堆積に関連してできあがったという地層形成の背景を示しています。

より細かい検証についてはその地層に含まれている化石や地層そのものの形成の過程と照らし合わせる必要がありますが、堆積岩を知ることは地層に関してより多くの手がかりを与えてくれることにつながるのです。