砂金のポイントの探し方――地質図とGoogleマップ

本サイトで何度もお伝えしているように、川で砂金を採るためには基盤岩が顔を出しているポイントを探り当てることが重要です。

とはいえ、自分の目についた川を片っ端からやみくもに探そうとするやり方は、あまり効率が良いものだとはいえません。

今回は、私が川で砂金を採るときのポイントの探し方についてご紹介していきましょう。

金が出るための条件

日本全国にはたくさんの河川がありますが、その中から砂金が採れるポイントを探し出すためには、金を産出するための地質的な条件というものを考える必要があります。

こちらの「金のなりたち――マグマと熱鉱床とのつながり」のページで検討したように、金の粒子は石英の脈に入り込んで成長するという性質があります。

この石英はマグマ(溶岩)に含まれる「ケイ素」(SiO2)が元になった結晶体で、それを多量に含む岩石としては「流紋岩」と「花崗岩」という火成岩が挙げられます。

このうち、より地表に近いところで形成される岩石としては流紋岩になりますので、金を探す際にはその河川の周囲に流紋岩を含む地層や岩体があるかどうかがひとつの判断基準となります。

また、流紋岩以外にもケイ素を多く含む「珪長質(けいちょうしつ)岩」や「酸性岩」などもその候補として挙げられます。

さらに、金を探すうえでの重要な手がかりのひとつとして、日本にかつて存在していた「鉱山」があります。

金は銀や銅、鉄と同じ重鉱物で、その鉱脈を採掘していた鉱山があるところは風雨の侵食によってそれらの重鉱物の粒子が周囲の河川に流れ出し、下流に堆積している可能性が高くなります。

そのため、金を探す上では、以上に挙げたいくつかの条件を押さえておくことが非常に大切です。

さて、これらの条件をふまえて金が出る河川を特定する際に役立つのは、「地質図」というものになります。

地質図は私のような地学を専門としている人びとが使うもので、具体的には次のような色分けがされた地図になります。

地質図の中にはその地域がどのような地層や岩石でできているのかを色と記号で示されているだけでなく、かつて存在していた鉱山の情報も掲載されています。

この地質図を参照することで、河川の周辺の地層や岩石が金を産出する条件にあてはまるかどうかを検討することができるわけです。

なお、地質図は地質や土木関係の専門家が利用するもので、かつてはそれぞれの地域のものを一枚ずつ購入して使う必要があったのですが、現在ではインターネット上にそのデータが公開されており、誰でも無料で閲覧・利用できるようになっています。

こちらの「地質図カタログ」のページでは、日本全国の地質図の最新版を無料でダウンロードして閲覧・利用することができます。

また、同サイトで公開されているこちらの「地質図Navi」のページでは、Googleマップの地形図の上に地質図のデータを重ねたシステムが構築されており、日本全国の地質図をマウス操作でシームレスに見ることができます。

この地質図の特徴と閲覧の方法については、こちらの産業技術総合研究所の地質調査総合センターにおける「地質図を知るページ」でも詳しく説明されていますので、あわせて参照してください。

以上のように、地質図で河川の周囲や上流の地層・岩体、鉱山の有無を見ることで砂金が出そうな場所を探すことができるのです。

「Googleマップ」で基盤岩を探す

以上のようにして砂金が出そうな河川を特定した後、次に必要なのはその河川のどこで実際に砂金採りを行うかというポイントを決める作業になります。

本サイトでも何度も触れているように、たとえ同じ河川であっても砂金採りを行うための取りやすいポイントというものがあり、それは川面に基盤岩が出ている場所になります。

この基盤岩を探すための方法として、「Googleマップ」を使うことが挙げられます。

Googleマップについては、もはや説明の必要のないぐらいに私たちの生活に浸透したサービスとなっています。

こちらの「砂金の調査記録(1)――岡山県小田郡矢掛町」のページで検討した岡山県矢掛町の河川については、以上の手順で基盤岩の場所を探し、実際に砂金採りを行ったものとなります。

Googleマップでは通常の道路地図以外にも、周囲の地形を写真で表示する「航空写真」のモードに切り替えることができます。

以下の画像は、岡山県小田郡矢掛町における河川の基盤岩のポイントをGoogleマップで表示したものになります。

通常の地図だけでは川の中の様子は分かりませんが、航空写真モードに切り替えると川の中に多くの岩石が映っている様子を見て取ることができます。

さらに、河川の実際の風景をより詳細に見る場合には、「Google ストリートビュー」を活用することができます。

この写真を見ると、川の中に基盤岩が顔を出している様子を確認することができたため、この部分を砂金採りのポイントの候補として調査を行ってみたというわけです。

以上のように、インターネットで無料で公開されているさまざまな地質的な情報を駆使することで、河川がどのような場所にあってその中に基盤岩があるかどうかについて、家にいながらにして調べることができるのです。

事前の準備と調査の大切さ

今回は、地質図とGoogleマップを駆使して砂金が採集できるポイントを探す方法について紹介してきました。

かつてはこのようなサービスはまったくなかったため、化石や鉱物を採集するときには現場に到着してそこではじめてどのように動くのかをその都度考え、場合によってはそこに何度も通わなければならないということが当たり前でした。

しかし、今はインターネット上でさまざまなサービスを無料で使うことができますので、実際の現場やフィールドがどのような状態になっているのかについて、あらかじめ知ることができるようになっています。

砂金が採れそうなポイントを絞っていっても、実際には作業のしやすい場所ではなかったり、物理的に川の中に入れなかったりといったこともありますが、事前にそれらの状況がある程度分かっているだけでもフィールドで動くときの労力というものを大幅に削減することができるわけです。