鉱物としての砂金の特徴――金色に見える他鉱物との違い

みなさんが川で砂金を採ろうとしたときには、ひとつ注意点があります。

それは金とよく似た「黄色い色をした鉱物」というものがいくつか存在していることです。

せっかくみなさんが苦労して川の土砂を集めてパンニング皿を使って泥と鉱物をより分け、その底の方に金色に光る鉱物を見つけたとしても、それが実は金ではなかったということもあるのです。

今回は、金とよく似た鉱物を取り上げ、その化学的な組成の違いもふまえながらその特徴を説明をしていきます。

金色に見える鉱物(1)――黄鉄鉱

まず、金色に見える鉱物の代表例として「黄鉄鉱」(おうてっこう)と「黄銅鉱」(おうどうこう)というものが挙げられます。

これらは鉱物の大きなかたまりとして見ると金との見分けはつきやすいのですが、実際の砂金採集の現場で見られるのは細かい粒状になっているため、その場ではなかなか判断に困るところがあります。

実際に、以下の動画でそれぞれの鉱物を並べてみましたので、ご覧ください。


金によく似た鉱物の一例
(画像をクリックで動画を再生)

では、最初に挙げた「黄鉄鉱」を説明していきます。

黄鉄鉱は黄色い色に見える鉱物ですが、その組成としては「鉄」(Fe)と「硫黄」(S)が結合した鉱物(FeS2)となります。

ただ、この黄鉄鉱になるためには条件があり、鉄と硫黄が結合する際に圧力や温度が比較的に低い状況では「硫化鉄」(りゅうかてつ/FeS)になるのですが、それらが高圧・高温の条件下のときに黄鉄鉱という鉱物になります。


「硫化鉄」と「黄鉄鉱」の特徴
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動画でも示しているとおり、黒色の硫化鉄と黄色い黄鉄鉱では見た目がかなり違うことが分かって頂けると思います。

なお、硫化鉄と黄鉄鉱の密度(比重)は、どちらも5.0(g/cm3)前後ですので、金の密度の19.32(g/cm3)と比較すると水の中での動きがまったく違うところで見分けることが可能だといえます。

金色に見える鉱物(2)――黄銅鉱

また、この黄鉄鉱によく似た金属として、「黄銅鉱」があります。

化学的組成としては、黄鉄鉱(FeS2)に銅(Cu)が加わった鉱物(CuFeS2)となります。

鉱物の外見的な特徴としては、黄鉄鉱がやや白味がかった黄色であるのに対して、黄銅鉱はより深い黄金色になっています。


「黄銅鉱」の化学的組成とその特徴
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動画を見て頂ければ分かるとおり、黄銅鉱は黄鉄鉱よりもさらに金に近いような色をしています。

このように、黄銅鉱の見た目は金に近いものの、その密度(比重)は4.2(g/cm3)ですので金よりも軽く、黄鉄鉱と同様にそこで見分けることが可能となります。

金の特徴――金の粒子から金のつぶへ

最後に、金の特徴を挙げておきます。

そもそも、金という鉱物は石英の脈の中に小さな粒子として含まれており、肉眼で見えるようなものではありません。

その金を含む鉱脈が侵食を受けて川に流され、岩の割れ目などの深い底に溜まって粒子同士が結合しながらようやく砂金の粒になるという過程を経ています。

そのため、私が長年見つけてきた砂金は、それを掘り起こしていることになるわけです。


金を含む鉱脈と砂金の特徴
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私自身も何年もかけて砂金を採集してきましたが、これだけの大きさの砂金が肉眼で見えるようになるためには、私の砂金採集にかけてきた年月をはるかに超える長い時間が必要だったといえるわけです。

さて、以上のような特徴をもつ金は、実際のパンニング皿の中での動き方にも影響を与えています。

砂金を含む土砂をパンニング皿を使って選別していくと、その底には砂鉄と金のみが残っていきます。

このとき、金は比重が約19.32(g/cm3)と非常に大きいという特徴があるため、パンニング皿の底で水を動かしてみても砂金はほとんど動きません。


砂金と他の鉱物との動き方の違い
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以上のように、水を動かしても砂金はほとんど動かないために、そこから他の鉱物と見分けることができるのです。

砂金を採ることと他の鉱物を知ること

以上、砂金とよく似た「黄鉄鉱」「黄銅鉱」そして「砂金」という鉱物のそれぞれの特徴について取り上げてきました。

私自身も砂金採集のときにパンニング皿に残った金色の粒を見つけて「やっと金が取れた!」と思ってよくよく調べてみると、実はそれと似たまったく別の鉱物だったことが分かってがっかりしたという「ぬか喜び」を何度も経験してきました。

金を採るということは、その他の鉱物の特徴を知ることにも通じていますので、それらの判断ができることがよりたくさんの砂金を採集するための目を養うことにもつながっていくわけです。