地球上を移動する大地――プレートテクトニクス

普段、私たちはまったく気づきませんが、私たちが立っている大地は何万年もの時間をかけて昔から動いており、今この瞬間も動き続けています。

ただ、昔から大陸や大地が移動しているらしいという状況証拠は数多く見つかっていたものの、大陸を動かす力やその仕組みについては分からない状況が長く続いていました。

前項までで説明してきた地球の内部構造を手がかりとして、今回は地球上の大地や大陸が動くメカニズムについて確認していきましょう。

「大陸移動説」から「プレートテクトニクス」へ

まず、以下の大西洋を中心とした世界地図を見てください。


大西洋中心の世界地図

中央の大西洋を挟んで西側に南アメリカ大陸、東側にアフリカ大陸が位置しています。

この2つの大陸の海岸線に注目してみると、ぴったりとくっつきそうな気がしないでしょうか?

実は、このことに着想を得て、大陸が移動しているのではないかと考えた人物がいたのです。

その人こそが「大陸移動説」を提唱したドイツの気象学者アルフレッド・ウェゲナー(1880-1930)です。

ウェゲナーは地球上におけるすべての大陸がもともとひとつの巨大な大陸である「パンゲア大陸」から長い時間をかけて移動したものと考え、この大陸移動説を検証するためにさまざまな調査を行いました。

たとえば、南アフリカ大陸とアフリカ大陸が海岸線だけでなく大陸棚の境界線までもぴったりと一致することや、両大陸の地層や地質を調べてそこに共通した化石が見られるなどの証拠を発見し、それらを大陸移動説の根拠としました。

しかし、両大陸においてそのような物的証拠は発見されたものの、当時、その巨大な大陸を移動させるための「原動力」がいったい何なのかについて説明することができなかったことから、大陸移動説はいったん歴史から姿を消すことになったのです。

この大陸を動かす原動力の存在が明らかになったのは、ウェゲナーの死後、1950年代以降に入ってからになります。

それが「プレートテクトニクス」の理論で、大陸の移動にはマントルの対流が関係しているのではないかという説が提唱されました。

その後、海底の地層に含まれる地磁気の比較・分析から、大陸が移動したと考えなければ地磁気の分布状態が説明できないことが確認され、ウェゲナーの大陸移動説が正しかったことが証明されたのです。

マントルの対流とプレートが動く仕組み

プレートテクトニクス理論では、「プレート」とよばれる岩盤の部分が動くことで大陸が移動することを説明しており、そのプレートの動きにはマントルの対流が関係しています。

マントルはかんらん岩を主成分とする固い岩石ですが、融点の1000度に近づくと柔らかくなる性質があります。

前項で確認したように、地球の内部は内核に向かって下層になればなるほど温度が高くなっていき、マントルの融点である1000度の部分を境目として、地殻とマントルの部分を「リソスフェア」、そのリソスフェアよりも下層のマントルの部分を「アセノスフェア」といいます。

プレートとはこのリソスフェアの部分を指していて、それよりも下層にあるアセノスフェアの部分が対流することによってプレートが動くという仕組みになっています。

さて、先に挙げた大西洋の海底には、海底火山という形で「大西洋中央海嶺」というプレートの湧き出し口が存在しています。

上図の左側に南アメリカ大陸、右側にアフリカ大陸があり、その中央の縦の断裂が大西洋中央海嶺になります。

大西洋の海底におけるこの中央海嶺では、その断裂を境目として西側と東側にそれぞれのプレートが移動しており、その影響で2つの大陸が現在も離れていっているわけです。

なお、この中央海嶺の西側の部分は「南アメリカプレート」、東側は「アフリカプレート」とよばれています。

その他、地球上には14~15枚のプレートがあり、それぞれ固有の名称がつけられています(下図参照)。

これらのプレートは下層のアセノスフェアにおけるマントルの対流によって動いていますが、プレート同士が衝突すると山脈が形成されたり、片方のプレートがもう一方のプレートの下に潜り込むことで地震が発生する原因になったりします。

たとえば、エベレストのある世界最高峰のヒマラヤ山脈はかつて「インドプレート」と「ユーラシアプレート」が衝突して形成されたものであり、今も両方のプレートがお互いに押し付けあっているために、ヒマラヤ山脈は現在も少しずつ隆起し続けています。

また、日本は「フィリピン海プレート」「北アメリカプレート」「ユーラシアプレート」「太平洋プレート」の4つのプレートに囲まれており、これらのプレート同士の衝突と沈み込みによって地震の発生するリスクを常に抱えている島国であるといえます。

地球上にあるプレートは今も動き続けていますが、その移動距離は年間数ミリ~数センチですので、私たちの知る世界の大陸が今の場所に位置するまでにはかなりの年月がかかっていることが分かると思います。

このように、プレートテクトニクスの理論の登場によって大陸が動くメカニズムだけでなく、山脈や海底火山、地震などのような複数の地学的現象を総合的に説明できるようになったのです。