地球の層構造――地殻・マントル・核

前項までで地球の外部的な特徴を確認してきました。

今回は、地球の内部、すなわち地球の層構造について説明をしていきます。

巨大な地球の中はいったいどうなっているのでしょうか?

地球の5つの層と境界面

さて、地球の地中奥深くはどのようになっているのでしょうか。

その内部構造を見ていくと、地球は全体がひとつの岩や海でできているわけではなく、以下の図のようにいくつかの層が重なってできています。

地球の構造を大きく分けると、地球の表面からそれぞれ「地殻」「マントル」「核」という3つの層になっています。

このうち、マントルと核については、さらに上部マントルと下部マントル、内核と外核とに分けられており、全体で5つの層でできています。

私たちが地面を掘っても土や岩石しか出てきませんが、実はマントルや核ではその成分が違っており、また、地球は中心に近づけば近づくほど温度と圧力が高くなっていきます。

層の名称 主成分 温度 圧力
マントル かんらん岩・岩石 1000~3000度 100~150万気圧
外核 金属(流体) 4000~5000度 150~300万気圧
内核 金属(固体) 6000度 300~400万気圧

地球型惑星と木星型惑星の特徴の部分でも触れましたが、地球型惑星の核は金属でできており、木星型惑星では岩石や氷によって核が形成されています。

実際、地球の中心核である内核とその周りの外核の部分はどちらも金属でできています。

ただ、内核と外核では同じ金属でも固体と液体という違いがあり、外核部分では地球内部の高温と圧力によって金属が液体化しており、内核はそれよりもさらに高い圧力がかかっているため金属が固体として存在していると考えられています。

また、これら層と層の間にはそれぞれ固有の「不連続面」と呼ばれる名前がついていて、各層の境目になっています。

境界 境界面の名称 深さ
地殻とマントル モホロビチッチ不連続面 5~50km
マントルと外核 グーテンベルク不連続面 2900km
外核と内核 レーマン不連続面 5100km
内核 6400km

これらの不連続面の名称には、各層に境界面が存在していることを発見した研究者の名前がつけられています。

さて、地球の内部構造の概要を説明してきましたが、実は人類が今まで掘ることのできた地中の深さは最大で10~12km程度であり、それ以上の深さを掘り進めようとしても非常に高い圧力がかかってしまい、いまだにそれを超える深さの穴を掘ることはできていません。

では、1000kmを超えるような地球の内部構造やその成分の違いをどのようにして発見することができたのでしょうか。

地震波と内部構造とのつながり

結論を先にいえば、地球上で起こる「地震波」の伝わり方の違いを観測することによって、地球の内部に複数の層構造が存在していることが分かったのです。

この地震波の内容については改めて説明を行いますが、地震の波には大きく分けると「P波」と「S波」という2種類があります。

地震波の種類 揺れの方向 伝達物質
P波
(Primary Wave)
固体・液体・気体
S波
(Secondary Wave)
固体

P波(Primary Wave)とは地震が発生したときに最初に地面を伝わる縦揺れの波で、S波(Secondary Wave)とはP波のあとに続いて届く横揺れの波のことを指しています。

地震が発生したときには地球各地に設置されている地震観測計にこのP波とS波が記録されるのですが、観測地点に届く地震波を統計的に比較してくと、なぜか場所によってその届き方に違いが見られたのです。

たとえば、地震波の速度がある深さを超えると変化したり、その伝わる方向が曲げられて屈折したりするなどです。

この地震波の速度や伝わる方向が変化する場所を観察してみると、ある一定の深さに集中しており、その部分を境にして地球内部の密度や成分が変化しているのではないかと考えられ、これが先に列挙した3つの不連続面の存在と層構造の違いの発見につながったわけです。

また、地球内部に固体の層と液体の層があることも、このような地震波の特徴の違いから判明しました。

縦方向の波であるP波は、その間にある物質が固体であっても液体であっても関係なくその中を伝わっていく性質があります。

一方、横方向の波であるS波は、固体の中は伝わるけれども、液体の中は伝わらないという特徴があります。

この2つの地震波の性質から考えた場合、地震が起こったときにS波が観測されない理由として地球内部に液体が存在しており、それがS波の伝達を妨げていると考えられたわけです。

地球の内部構造を知る意義

さて、以上が地球内部の層構造の概要になりますが、このことから一体何が分かるのでしょうか?

まず、すでに触れたように、地球は「地球型惑星」の特徴をもつ惑星であり、「木星型惑星」とは違った特徴があります。

そのため、地球内部の層構造やその成分の違いを知ることが他の惑星や天体の構造を考える際の手がかりとすることができます。

次に、地球内部の構造があきらかになるにつれて、地球に「磁場」が発生するメカニズムを説明することができるようになりました。

みなさんもご存知のように、方位磁針やコンパスを使用したとき、常にN極が北を指し、S極が南を指します。

このような現象が生じる理由としては、当然ながら方位磁針やコンパスについている磁石が地球の磁力に引かれるためなのですが、ではその地球の磁場はどのような仕組みで発生しているのでしょうか?

これを説明するためのひとつの考え方として、「地球ダイナモ理論」と呼ばれるものがあります。

地球の外核が液体化した金属でできていることはすでに説明しましたが、それが地球の自転にあわせて外核の中で対流することによって電流が生じ、そこから磁場と磁力が発生しているのではないかという理論です。

興味深いことに、地球の地層を観察していくと、地球の磁場というものはその長い歴史の中でN極とS極が頻繁に入れ替わるという現象が起こっています。

これには外核における液体化した金属の対流が関係しており、何らかのきっかけでその動きの方向が変わることで地球の磁場が反転すると考えられています。

以上のように、一見、別々の事柄がまったく思いもよらない現象の説明に応用できるのが地学の面白さのひとつだといえます。