地球の平均密度を考える――質量と体積の関係

さて、前項までで地球の大きさと質量を求めてきました。

これらが分かると、次に地球の「平均密度」というものを求めることができます。

地学の項目としては計算が大変な部分なのですが、実は結果となる数値だけを覚えておけば問題ありません。

地球に関連する数値ですので、それを導くための理屈とその過程に絞って解説をしていきます。

地球の平均密度を求める方法

最初に、ある物体の「密度」というものを求める公式を以下に示します。

上式に表現されているように、ある物体の密度(ρ)を求めるためには、その質量(M)を体積(V)で割ればよいということになります。

この密度の記号は慣習的にギリシャ文字の「ρ」(ロー)が用いられており、「g/cm3」という単位であらわされることが多いものです。

要は、密度には、ある物体の1立方センチメートルあたりにどれくらいの重さが含まれているかが示されているわけです。

さて、この式に地球の質量と体積の数値を実際に代入していくと、次のようなことになっていきます。

まず、地球の質量(M)については、前回求めた「6.0 × 1024(kg)」をそのまま用いることができます。

次に、地球の体積(V)については、地球は球体ですので、数学で習った球体の体積の公式である「4/3 × πr3」(π:円周率、r:半径)を使うことになります。

この公式の中の「r」は「半径」ですので、実際の数値としては地球の半径である「6400km」が入ることになります。

ただし、これらの数値を密度の単位である「g」と「cm3」に合わせるためには、それぞれの数値をあらかじめ変更しておく必要が出てきます。

そうすると、地球の質量(M)については、「6.0 × 1024(kg)」を「g」にするので、1000倍となって「6.0 × 1027(g)」となります。

同様に、地球の半径6400km(=6.4 × 103km)を「cm」に直すと、1000倍(m)にさらに100倍(cm)となりますので「6.4 × 108(cm)」と変換することができます。

では、これらの数値を実際に代入してみましょう。

かなり長くて複雑な計算ですが、地球の平均密度がおおよそ5.5(g/cm3であることを求めることができました。

地学を勉強していると、この地球の平均密度の値はよく出ますので、計算過程はともかく数値だけでも覚えておくと色々と応用がききます。

地球の平均密度を求める文字式

さて、以上までで地球の平均密度を求めたわけですが、実は今回のテーマは私にとって非常に思い入れのあるものになっています。

というのは、私が教師になるときに受けた教員採用試験の理科の問題の第1問として、まさにこの「地球の平均密度を求めよ」という問題が出たからです。

ただ、その計算結果の値が5.5(g/cm3)と分かっていても、試験の回答としては実際に立式をして問題を解かなくてはなりません。

今回は、地球の平均密度を算出する際に細かい数値をいくつか使いましたが、制限時間のある試験時間中にその数値を入れて本当に細かい計算を行うとなるとかなりの時間のロスになります。

そこで、私は文字式のみを使用してその正答を出すということを行いました。

実は、地球の平均密度を算出する際に必要となる「地球の質量」に関する文字式については、すでに前項の「地球の質量を考える――重さと万有引力の法則」のこちらの箇所で紹介しています。

この式にはすでに「地球の質量(M)」をあらわす文字式が書かれていますので、あとは密度を求める式にしたがって「地球の体積(V)」、すなわち「4/3 × πr3」を代入すれば、以下のような文字だけでできた式が作れるわけです。

一応、この式に書かれている各記号の数値は地学における基礎知識なので覚えてはいるのですが、いちいち代入してややこしい計算をする必要はありませんので、単に「上式を解くと、地球の平均密度は5.5(g/cm3)となる」と回答したわけです。

このように、地学で行う計算は、数値が大きくなりやすいことに加えて単位の変換計算も多くなるため、問題として出題される場合にはそれらがシンプルに出せる方法があるか、あるいは知識として知っているとすぐに答えが出せるものがとても多いのです。

地球の平均密度を求めるメリット

では、例によってなぜ地球の平均密度を求める必要があったのかという話になりますが、これはその地球の平均密度が他の惑星との比較をするための基準となるからです。

太陽系の惑星には「地球型惑星」と「木星型惑星」がありますが、それぞれの特徴として成分の違い、すなわち地球のような金属と岩石を主成分とする岩石系の惑星なのか、それとも木星のように氷やガスを主成分とするガス系の惑星なのかといった違いが存在しています。

この違いを推測するために、それぞれの惑星の平均密度がその手がかりとなるわけです。

たとえば、木星は地球の11倍の大きさの惑星で、体積にして1000倍以上も違うのですが、その平均密度は「1.33(g/cm3)」で、これは明らかに地球の密度よりも小さな値となっています。

その理由は明白で、木星は地球に比べて巨大な惑星であるものの、その大きさの割にガスを主成分とする質量の小さな惑星だからです。

以上のように、地球という惑星の平均密度を求めることによって、その他の惑星の成因を推し量るためのひとつの指標とすることができるのです。