兵庫県における「黒曜石」の代表的産地を訪れる

みなさんは「黒曜石」(こくようせき)という岩石をご存知でしょうか。

黒曜石は黒色の光沢のある岩石で、この岩石を割ると鋭利な断面が出てくることから、刃物として用いられるなど人類の生活に密着した利用のされ方をしてきました。

今回は、黒曜石の産地として「知る人ぞ知る」兵庫県豊岡市のフィールドをご紹介しましょう。

黒曜石の特徴

黒曜石の岩石の特徴としては、こちらの黒曜石のページでご紹介しているように、黒色の岩石で表面がガラスのように光沢があり、手触りがつるつるとしていることが挙げられます。

黒曜石
黒曜石

化学的組成としては、火山岩である「流紋岩」と共通する性質のものですが、ガラス質(ケイ素/SiO2)が多く含まれており、流紋岩質マグマが水中などで急激に冷やされることで黒曜石になると考えられています。

この黒曜石は割ると非常に鋭利な破断面が出てくることから、人類の歴史においても石器時代からナイフや鏃(やじり)としての利用が行われてきました。

ただ、この黒曜石はどこでも採集できるというものではなく、その流紋岩質マグマという化学的組成から考えると自然と産地が限られてしまうという特徴があります。

こちらの地球の大地の生成――火山・マグマのページでも説明しているように、流紋岩質マグマは噴火や噴出の際に大爆発を起こすという性質があるとされています。

黒曜石が産出されるためにはこの流紋岩質マグマが噴出しており、かつそれが急速に冷やされるという2つの条件を満たすことが求められるため、産地が限られてしまうことにつながるわけです。

日本国内の黒曜石の産地としては、約70箇所程度の場所がこれまでに報告されています。

兵庫県における黒曜石の産地――兵庫県豊岡市福田

岩石の中でも採集が難しいとされる黒曜石ですが、兵庫県においては豊岡市福田という地域が比較的手軽に黒曜石を採集できる「知る人ぞ知る」場所として挙げられます。

具体的な場所としては、地図中の「リビンズ・トヨオカ」の北側と大浜川の南側に挟まれた山の北側の斜面になります。

兵庫県豊岡市福田の山の斜面
兵庫県豊岡市福田の山の斜面

今から15年以上前のことになりますが、2004年に台風23号が近畿地方に接近した際に、円山川が決壊して大氾濫を起こして豊岡市の住宅街が水浸しになったという出来事がありました。

その台風接近の際、この山の斜面ががけ崩れを起こして、その土砂が目の前の大浜川に流れ込みました。

山の斜面と大浜川
山の斜面と大浜川

そのときに崩壊した山の斜面に流紋岩の露頭が表に出てきたのですが、そこに黒曜石が多量に含まれていたのです。

この黒曜石が発見された経緯については以下の動画で説明をしていますので、ご覧ください。


兵庫県における黒曜石の産地(1)
(画像をクリックで動画を再生)

また、この場所では少し山の斜面に近づくと黒曜石の露頭を見つけることができます。

黒曜石の露頭
黒曜石の露頭

以下の動画にて黒曜石の特徴を説明をしていますので、ご覧ください。


兵庫県における黒曜石の産地(2)
(画像をクリックで動画を再生)

2004年の災害の後に黒曜石の露頭が顔を見せたことにより、この場所の周辺や川の中には黒曜石を多数発見することができるようになり、黒曜石の産地として注目を浴びることになったわけです。

現在でもこの山の周辺や川の中を少し探すだけで簡単に黒曜石を手に入れることができます。

流紋岩と黒曜石
流紋岩の周囲にある黒色の黒曜石
大浜川の中の黒曜石
大浜川の中にも流れ込んだ黒曜石が見られる

私たちの眼の前にある現象を知る

過去、兵庫県でも黒曜石を採集していてそれを日常的に活用していたという歴史が残されていたのですが、その具体的な場所については特定に至っていませんでした。

しかし、災害後のがけ崩れを起こした土砂の中に多量の黒曜石が含まれていたことから、その言い伝えが正しかったことが証明されたわけです。

地学を学んでいると、とあることがきっかけとなってそれまで失われていた歴史的事実が突如として判明することがあります。

そう考えると、岩石に限らず私たちの眼の前に見えている風景も長い年月をかけてさまざまな可能性や偶然を経てその姿を私たちに見せているのだという、当たり前のことですが忘れがちな事実が見えてくるわけです。

  1. ← 前へ
  2. ↑ メニューに戻る
  3. 次へ →