クロスラミナ(斜行葉理/斜交層理)の地層

地学において、「地層」はその地域一帯の岩石や化石が含まれている年代を判定する上でも必ず学ぶべき重要な項目となります。

今回は、その中のひとつである「クロスラミナ」(斜行葉理/斜交層理)が観察できる地層について詳しくご紹介します。

兵庫県三木市志染川のクロスラミナの地層

「クロスラミナ」とは日本語で「斜交葉理」(しゃこうようり)や「斜交層理」(しゃこうそうり)ともよばれるもので、堆積した地層が侵食によって削られた際に特徴的に見出される地層のことです。

今回ご紹介するクロスラミナの地層は、兵庫県三木市の志染川(しじみがわ)の川の側面に見られるものです。

この写真に映っているように、ここでは今から約2千万年前の神戸層群という砂岩の地層の中にクロスラミナを見て取ることができます。

この地層の特徴について、以下の動画で解説をしていますのでご覧ください。


クロスラミナ(斜交葉理/斜交層理)の地層
(画像をクリックで動画を再生)

地層を観察する際には、上と下のどちらの地層がより古いのかを判断することがとても重要で、基本的には下の地層の方が上にあるものよりも古いという「地層累重の法則」が存在しています。

その際、地層の中にクロスラミナが見られる場合、水流がどの方向に流れて下の地層を侵食したのかを判別する手がかりとなるため、その地層が形成された当時、どの方向に向かって川が流れていたのかを判断することが可能となるのです。

また、志染川を挟んだ対岸の側面にも同様のクロスラミナの地層が存在しています。

さらに、この地層には以下のような褶曲(しゅうきょく)が見られますので、ここではかつて地層が堆積した後に強い力によって捻じ曲げられたという事実を見出すことができます。

なお、この地層の褶曲については、こちらの「地層の形成と堆積構造――地層の上下を判定する」のページで解説しているように、褶曲がより大規模ものになると古い年代の地層が新しい地層の上に重なる「衝上断層」(しょうじょうだんそう)が形成されることもあり、その場合には地層の上下で年代が逆転するといった現象も存在します。

以上のように、堆積した地層がどのように切られているのかや地層の褶曲を見ることにより、ある地層が堆積した後にどのように侵食を受け、そこから新しい地層がどのような過程を経て形成されたのかといった当時の地層の状況を推察することができるのです。

御坂の逆サイフォン

また、この場所は淡河疏水(おうごそすい)の一部である「御坂(みさか)の逆サイフォン」としてもよく知られているところですので、あわせてご紹介しておきましょう。



御坂のめがね橋と逆サイフォンの鉄管(淡河川・山田川側)

この淡河疏水は、ここから南西20kmの先に広がる「いなみ野台地」に農耕用の水を供給するために明治期から大正期にかけて建造されたものです。

その経緯の詳細については、こちらの「兵庫県:淡河川・山田川疏水~いなみ野台地を潤す水の旅~」のページを参照して頂くとして、いなみ野台地は台地としての高さがあることからそれよりも低い場所にある周囲の河川から農耕用の水を引き込むことができず、北東に20km以上も離れた淡河川・山田川から疏水を引くことが計画・施工されました。

20km以上も離れた場所から水を引こうとした理由としては、淡河川・山田川がいなみ野台地よりも高い場所に流れている川だったことが挙げられます。

御坂のめがね橋の下には淡河疏水の鉄管が通っているのですが、これは淡河川・山田川といなみ野台地の高低差を利用した逆サイフォンの原理で水を動かしています。

具体的には、淡河川・山田川側の標高が約134mであるのに対して、いなみ野台地は標高が約131mとなっており、この高低差を利用して淡河川・山田川側の山の斜面から水を流して御坂のめがね橋の下を通し、反対側の山の斜面に向かって水を登らせるという逆サイフォンのしくみでいなみ野台地に水を供給しているわけです。


逆サイフォンの鉄管(至いなみ野台地)

ここで重要なこととしては、御坂の逆サイフォンの中に流れる水は眼の前に見えているこの斜面のみを登っているわけではなく、ここからはるか20km先に広がるいなみ野台地の高さに向かって水が昇り続けているということです。

この全長で20km以上にもおよぶ長さの鉄管全体がひとつの逆サイフォンを構成しており、それほどの大規模な空間的スケールで水が移動しているということなのです。

この淡河疏水によっていなみ野台地では稲作が広く行われるようになり、名実ともに現在の「稲美町」(いなみちょう)としての道を歩んでいくことになったという歴史につながっていくわけです。

大地に対する想像力をはたらかせる

地層や大地をどのように読み解いていくのかは、その土地をどのように利用できるのかという視点や見方につながっていく部分になります。

今回取り上げた御坂の逆サイフォンは、大地の高さの違いを利用することで遠く離れた土地に水を供給するという一大事業を実現できたわけですが、当然ながらその背後には測地や測量といった技術が必要不可欠だったといえます。

また、土地や大地を考える上ではそれをどれほどの時間的・空間的スケールで捉えることができるかも大切な要素となります。

すでに説明したように、淡河疏水そのものが全体で20km以上の規模で建造されていることに加え、大正期に完成したこの疏水は100年近く経過した現在でも引き続き利用されており、実際、長期間の使用に耐えられるようにめがね橋の橋脚は硬い岩盤の上に建造されています。

このように、地層や大地を考える際には、俯瞰的かつ長期的な視野で物事の変化を捉えるための想像力をはたらかせることが重要だといえるでしょう。

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