夏休み砂金教室――砂金の採り方と生活とのつながりを知る

日本の河川で砂金が採れることを知って以来、私はさまざまなところで砂金を採るための実習教室というものに関わってきました。

その中には高等学校の部活単位で開催した大がかりなものもありますし、一般の方を対象として小規模で行った砂金採り実習もあります。

今回は、私が夏休みの砂金採り実習の一環として開催した砂金教室の様子をお伝えします。

夏休みの自由研究としての砂金採り実習

夏休みに入る前、とあるご家族の方から小学生となる娘の夏休みの自由研究のテーマとして砂金の採り方を取り上げたいというお話があり、非常に小規模ながら砂金の実習教室を開催しました。

今回、砂金教室に参加されたご家族は、普段、都市部に生活をされていて自然に触れる機会も少ないとのことでしたので、まずは砂金の特徴をふまえながらどういうメカニズムにもとづいて河川で砂金が採れるのかについて解説を行いました。


砂金の特徴と河川で砂金の潜むポイントを解説する

砂金は非常に重たい鉱物であることからより深いところに入っていく性質があります。

そのため、河川に露出している基盤岩の底に溜まった土砂をパンニングで選り分けることで、砂金を手にすることができることをお伝えしました。

なお、今回の実習教室では、初心者の方でももっとも取り組みやすい「草の根引き」の方法を行いました。

まず、岩盤に生えている水草周辺の土砂を取り出し、それをザルに入れて洗っていきます。



岩盤上に生えた草の根と土砂を取り出す

このとき、岩盤の水草に付着した土砂は年月を経るとかなり強く固結しているため、小学生の方の力ではそれをほぐすことはなかなか難しい作業となってきます。

そのため、水草の根っこの土砂を洗浄する際には、まずは私のような大人がいくつかの塊に分けた上で、手分けして洗浄をするといった工夫が必要だといえます。



ザルの中で草の根と土砂を洗浄する

次に、その土砂をパンニング皿に入れてパンニングをしながら砂金よりも軽い土砂などは水に流していきます。



洗浄した土砂をパンニングする

なお、パンニング皿の取り扱いについてはかなりの慣れが必要ですので、初心者の方にはその動かし方のイメージをお伝えしながら実際に手元で一緒に動かすことがとても重要です。

その際、比重の大きな砂金は自然とパンニング皿の底に溜まっていきますので、それ以外の軽い土砂を少しずつ水に流して取り除いていくことがパンニング皿を扱うときのポイントになります。



実習で採れた砂金の粒

以上の手順を何度か繰り返していくと、最終的にパンニング皿の底には砂鉄と砂金のみが残ることになります。

このとき、パンニング皿の中に水を入れて動かしてみると、砂金のみが比重が大きいために動かないという特徴があり、それによって砂金が採れたかどうかが分かることをお伝えしました。

このときの砂金採り実習では何度か草の根引きを繰り返し、苦労の甲斐あって1m程度の砂金を手にすることができました。

今回参加されたご家族の方には、日本の河川で実際に砂金が採れることを実感して頂くとともに、早速、お子さんの自由研究のテーマとしてまとめることができそうだということを言って頂くことができました。

自然からの「恩恵」と「脅威」を知る

今回の実習では、河川で砂金が採れることとあわせてそのような金という物質が私たちの身の回りの電子機器、特にパソコンやスマートフォンの部品の一部として使われており、今やなくてはならないものとして活用されている事実についても解説を行いました。


金はパソコンやスマートフォンなどの基盤で使われる

また、それと同時に、砂金がどこから来てどのようにして動くのかということについてもお伝えしました。

こちらの「砂金の採集ポイントを定期的に巡回する」のページでもお伝えしているように、河川で採れる砂金はもともとその上流にある山が風雨による侵食を受けてその土砂が河川に流れ込み、下流に流されて溜まっていくというメカニズムで動いていきます。

特に、比重の大きな砂金はその重さからかなりの水流がないと動かないという性質があります。

折しも、今回の砂金実習を行うことになった数週間前には、2018年の6月下旬から7月8日頃にかけて西日本の広い範囲で「平成30年7月豪雨」が発生し、広島県や岡山県を中心に西日本の各地で河川の増水や氾濫が引き起こされました。

このたびの砂金採り実習を行った河川についても洪水に近いレベルの水の移動が発生していたことと、それにともなって砂金が動いている事実についても指摘をしました。


「平成30年7月豪雨」による河川の濁流(加古川上流域)

このような水害レベルの水の移動があったからこそ私たちは砂金を手にすることができたわけですが、その一方でテレビのニュースなどでも伝えられているように、この豪雨によって生じた大規模な水害によってたくさんの人が亡くなってしまったという面もあります。

今回、砂金採り実習に参加された方には、砂金採りというきっかけを通じて、私たちの社会に対する自然からの恵みという部分と同時にその怖さというふたつの側面があることについてもお伝えし、私たちを取り巻く自然というものとどのように向き合っていくのか、それを考えるための知恵として地学という学問の意義についても一緒に考えることができました。

砂金採り実習のご案内

今回の夏休み砂金採りの実習教室では非常に小規模でしたが、その分、砂金採りのための具体的な方法だけでなく参加者の方からの質問に答えることができるなど、密度の濃い時間を過ごすことができ、非常に満足して頂くことができました。

砂金採りにご興味がある方には適宜実習教室を開催しておりますので、ご希望の方につきましてはこちらのお問い合わせフォームからご連絡ください。