距離・重さ・時間の単位――地球基準の度量衡

地学という科目ではいろいろな単位が登場しており、それらについて改めて考えてみるとそこにはさまざまな発見があります。

たとえば、私たちは日常的に距離や重さ、時間などを測るときにはそれぞれに応じた単位を何気なく使っていますが、実はそれらは地球というものが基準になっているのです。

今回は、私たちの身の回りにある単位系をいくつか取り上げ、それを地球という基準から考えてみることにしましょう。

地球を基準とする単位系

まずは「距離」の単位の話から進めていきましょう。

距離、すなわち長さの単位としてもっともよく知られているのは、「メートル」(m)です。

このメートルという単位は、18世紀のフランスにおいて提唱されたもので、これはもともと地球の子午線の全周の長さ、すなわち地球の北極と南極を通るタテの長さを基準として決められています。

地球の子午線の全周の長さは4万kmで、これを4千万分割したひとつの単位を1メートルとして定めたわけです。

具体的には、フランスのダンケルクからスペインのバルセロナまでの距離を測量によって計測し、そこから地球全体の長さを算出した後に1メートルという長さの基準が定められました。

なお、測量による長さの計測には誤差がつきもので、その後の正確な測量の結果、地球のタテの長さは40009kmになっており、メートルの定義もより正確さを期するために、現在では「真空中で光が 1/299792458 秒に進む距離」というものに改められています。

次に、「重さ」の単位としては、「グラム」(g)が用いられています。

これは地球上に存在する水が基準となっていて、水の1立方センチメートル(cm3)の重さを1グラムとして決められました。

なお、1000立方センチメートル(1000cm3)は水の1リットル(L)に等しく、それは重さにすると1キログラム(kg)になります。

一見、1リットルの水の重さが1キログラムになるというのはえらく都合の良い偶然に思われるかもしれませんが、これは話が逆で、私たちが使いやすいようにそのようにして単位が決められたわけです。

最後の「時間」については、1日の時間の長さは24時間に定められています。

これは地球が太陽の周りを1周する公転周期を基準として、そこから割り出された単位になります。

地球が太陽の周りをどれくらいの日数で回るかというと、365.2422日になります。

地球は太陽の周りを回っていますので、1周すると360°になり、おおよそ1日に1°の角度(より正確には、360゚ ÷ 365.2422日 = 0.9856゚)で進んでいくことになります。

また、地球は公転と同時に自転をしており、自転を361回(360° + 1°)繰り返すことで、地球が公転を開始した元の位置に戻ることになります。

地球の自転は、正確な時間でいえば23時間56分4秒(=23.93444時間)で1回転をするのですが、地球の公転の周期に合わせるために、23.93444時間 × 361゚ ÷ 360゚ ≒ 24.00時間となり、ここから1日を24時間として定めているわけです。

ただし、ここでもともと生じている端数の部分については、4年に1度のうるう年において1日を加えて調整をしていることになります。

以上のように、私たちが普段用いている距離や重さおよび時間の単位は、地球というものを基準にして人間が定めてきたという経緯があるのです。

単位系は人間が都合の良いように決めるもの

距離や重さ、時間以外にも、人間が決めた単位系というものは他にも存在しています。

たとえば、水の沸騰する温度というものは100℃になっていますが、これも人間がそのように決めたからそのようになっているというものになります。

この水が沸騰する現象を理解するためには、地球大気における「気圧」について知る必要があります。

この気圧は地学における地球大気の分野でかならず触れることになっている単元で、こちらの「地球の大気と熱収支――気象変化の基本原理」のページでも説明をしていますが、地球の地上にはその上空にある空気の塊が押し付けられており、それは1気圧=1013hPaとして定められています。

沸騰とは液体が周囲の気圧と等しくなって気化する現象のことで、この地上における1気圧の環境下において水が蒸発する温度(=沸点)を100℃と決めたわけです。

なお、この沸点は1気圧未満の場所、たとえば1500mを超える山の上で水を沸かすと、地上に比べて大地に向かって押さえつけている空気の量が減るために気化が起こりやすくなり、そのような場所では100℃を下回る温度で水が沸騰することになります。

また、この気圧というテーマについてもう一歩踏み込んで考えると、1気圧は1平方メートル(m2)あたりにどれくらいの重さの空気の塊が乗っているかというと、具体的には約10トン(t)もの重さになります。

地上で生活している私たちは常にこの10トンにもおよぶ空気の塊の重さを背負って生きているのですが、私たちはそれを特別重たいものとして感じてはいません。

実はこれも話は逆で、私たち人間は地球上で生きる生命体としてそのような重さに耐えられるような形で構成されてきた、あるいは進化をしてきたわけです。

この環境が生命体におよぼす影響は非常に大きなものがあり、たとえば宇宙空間は無重量状態で身体に対する重さがかからない環境となっています。

この無重量状態に人間の身体がさらされ続けていると、筋肉を使って身体を支える必要がなくなるために、やがて筋肉が衰えていってしまうことが知られています。

これは環境に応じて生命体の形態や生物的特徴というものが変化してしまうということをあらわしているのです。

また、空気の中の成分としては酸素ではなく窒素がもっとも多く含まれていますが、この成分組成が大きく変化すると、私たちは呼吸ができなくなってしまいます。

つまり、私たち人間も含めて生物的存在というものは、身の回りの環境に最適化された形として今の生物の形態や生態になっているということができるでしょう。

さらに、この生物としての形態が単位系の基準となることもあり、たとえば私たち人間が古くから10進法を主に用いてきたのは、両方の手の指の数を合わせると10本だったからだといわれています。

このように、普段あまり意識することはありませんが、私たちの身の回りにあるものや私たちの存在そのものも、実は地球の環境といったものと切っても切れない関係にあり、単位系についてもそれらを基準として人間が定めてきたというわけです。

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