地球の大きさを考える――地学的な発想法

地球の形を地学的に見た場合、回転する楕円の形状をしていると捉えることでいろいろな現象を説明できることを確認しました。

地球が円の形であることが分かれば、その外周の長さを測ることができます。

ここでは数学を応用して、地球の大きさというものを計算で出してみましょう。

地球の大きさを求める方法

地球の形と同様、その大きさについても紀元前の段階でおおよその値がすでに計算されています。

この値を初めて計算したのは、古代エジプトのアレキサンドリアの図書館長をしていたギリシャ人のエラトステネスだと言われています。

では、彼はどんな手がかりを用いてどのように地球の大きさを計算したのでしょうか?

そのヒントとなるのが、太陽の位置になります。

地中海に面したアレキサンドリアに住むエラトステネスは、ナイル川上流の街シエネ(現在のアスワン/アレキサンドリアの南南東)において、夏至の時期の太陽が正午になると天頂(真上)の位置に来るという話を耳にしました。

そこで同じ時期の正午の太陽の位置を調べてみたところ、自分の住んでいるアレキサンドリアでは天頂から7.2°(度)だけズレていることが分かりました。

もし、地球が平面であればどこであっても太陽の位置に変化はないはずですが、この太陽の位置にズレがあるという事実から、エラトステネスも地球の形状が丸いと考えたわけです。

地球の形が円であると仮定した場合、この7.2°という角度の他にアレキサンドリアからシエネまでの距離が分かれば、円の角度と円周の長さの関係を比較することで地球のおおよその長さが計算できることになります。

エラトステネスは、アレキサンドリアからシエネまでの距離を5000スタジアと仮定しました(1スタジア=約185m)。

また、あるひとつの円の角度は360°、円周の長さは「2×半径(r)×円周率(π)」(=2πr)という公式で計算することができます。

そうすると、以下の比例式を考えることができます。

この式において得られた25000スタジアに対して1スタジアを185mとして円周の長さ2πrを求めると、46250kmという計算結果が出てきます。

地球の実際の円周の長さは約40000kmですから、紀元前の段階でこの方法を用いておおよその値を得ることができていたということになります。

地球の大きさにズレが生じた理由

さて、以上の手順で地球の大きさが算出されたわけですが、この値は実際の地球の大きさよりも15%も大きい数値が出ています。

これは誤差といわれるものですが、そこには何が影響しているのでしょうか?

よく知られている原因として、アレキサンドリアからシエネまでの距離を5000スタジアと仮定して計算したということが挙げられます。

そもそも、この5000スタジアという数値をエラトステネスがどのようにして算出したのかというと、これは当時のナイル川の上流と下流を行き来する行商人にその旅程の日数を聞いてその距離を算定したと言われています。

行商人が1日あたりに何スタジア進むかを聞き、それに旅程日数をかけあわせると全体で5000スタジアになったというわけです。

もうひとつ忘れられがちなのは、アレキサンドリアとシエネの地球上の位置関係です。

アレキサンドリアとシエネはそれぞれナイル川の下流と上流にある街ですが、正確には子午線上の南北の位置にあるわけではなく、アレキサンドリアから見てシエネは東の位置にズレていたため、そのズレの分だけ余分に距離が長くなってしまっていたわけです。


アレキサンドリアとアスワン(旧シエネ)の位置関係

とはいえ、このような誤差が見られるものの、紀元前の段階で数学を使って地球の大きさを計算した功績は讃えられるべきものです。

今回は地球の大きさについてエラトステネスの計算方法を取り上げましたが、このような数学を道具として用いてさまざまな現象や事実を追いかけていくことが地学の大きな特徴のひとつだといえます。