はじめに――地学を学ぶこととは?

地学のことを学ぶ前に、地学という学問領域の特徴とそれを学ぶことの意義について解説していきます。

地学 = 地球科学の特徴

地学は「地球科学」を略した言葉で、現在の私たちが暮らしている地球の姿とそれを取り巻く環境(宇宙を含む)のすべてを考察の対象としています。

そのため、地学で取り扱う分野は以下に挙げたように、非常に幅広く多岐にわたっています。

  • 太陽系の形成と地球の誕生
  • 地球の形と層構造
  • 火山と地震、地殻変動、プレートテクトニクス
  • 大気と海水の運動、気象変動
  • 地層の形成
  • 動物と植物の進化の歴史
  • 太陽と恒星の活動
  • 宇宙の構造 etc.

なお、ここに挙げた地学で学ぶ領域は大まかに2つに分けることができます。

まず、地球の歴史と進化、地球の構造といった「地球の内部」に関する領域です。

次に、地球を宇宙における惑星のひとつとして捉えて恒星や天体との関連でその歴史を考えるような「地球の外部」に関する領域です。

このような地学の特徴として、地球や宇宙といった時間と空間のスケールが非常に大きなものを考察の対象として扱う側面がある一方、原子や分子などのような目に見えない非常にミクロな領域も同時に扱うため、学ぶ人の想像力をできるだけ豊かにすることが求められるところがあります。

たとえば、私たちが今生活している大地は毎年少しずつ動いているのですが、その移動する距離というものは年間で数ミリ~数センチといった非常に小さな値ですので、今の世界地図のような大陸の形になるまでには、まさに数千万年から数億年という単位の年月を要しており、そのようなスケールで話が進められるのです。

そのため、非常に大きなものと非常に小さなものを一緒の土台に乗せて考えるところに地学の特徴があらわれてきます。

以上のように、地学ではこのような地球の姿やその動きを捉えるために、数学や物理、化学、生物といった他分野のさまざまな知識や概念を駆使する応用科学としての側面ももちあわせているのです。

地学を学ぶことで「気づく心」が養われる

私たちの身の回りにある自然現象を考察の対象として扱うのが地学の特徴ですが、私たちにとってありふれた現象であったとしても、それをいざ考えるとなるとスケールが大きくなりすぎて、あるいは小さすくなりぎてよく分からないということが起こります。

しかし、地学を学ぶ上で大切なのは、そのような物事や出来事を見るときの「考え方」や「捉え方」というものなのです。

というのも、地学で扱う事項については、まだまだ分かっていないことや知られていないことがたくさんあるからです。

たとえば、「宇宙の果てはどのようになっているのか」や「深海の様子は一体どうなっているのか」などは、まだ誰も見たことがないので現状でもよく分かっていません。

ただし、そこで「分からないから」で終わりにせず、そのような分からないものに対して数学や物理、化学や生物といったありとあらゆる知識を総動員して何とか仮説を立てて検証を行い、それらを理解しようとしてきたことが応用科学としての地学という学問の歴史そのものでもあるのです。

ですので、自分の身の回りの自然現象をさまざまな理屈を使って明らかにしようとする地学にみなさんが触れて慣れ親しむことによって、「こんな考え方をするのか!」といった驚く心と、今まで見たことも聞いたこともないものに対して「これはどうしてこうなっているのだろうか?」と不思議に思う心、すなわち「気づく心」が自然と身についてくるのです。