地震のメカニズム――プレートの動きと断層運動

私たちが住んでいる日本は地震が頻繁に起こることから「地震大国」として知られており、その背景には前項までで確認してきたプレートの動きと火山活動が深く関係しています。

この地震は災害としての側面に注目しがちですが、それを地学的な観点から考えてみるとそこにはまた違った役割を見て取ることができます。

ここでは地震が発生するメカニズムとそれが大地に与える影響について確認していきましょう。

地震の種類とその特徴

地震とは大地の地下にある岩盤がズレたときに発生する振動が地上に伝わって地面が揺れるものです。

この岩盤がズレるためにはそれが押される力が必要なのですが、その力についてはプレートの動きが関係しています。

こちらの地球上を移動する大地――プレートテクトニクスのページで説明したとおり、日本は「ユーラシアプレート」「北米プレート」「フィリピン海プレート」「太平洋プレート」という4つのプレートに取り囲まれており、それらが常に衝突して押しあっている状態にあります。


日本周辺のプレート

具体的には、日本列島の地下にある「ユーラシアプレート」と「北米プレート」に向かって、南側の「フィリピン海プレート」と南東側の「太平洋プレート」が押し続けているのです。

このプレート同士が衝突することで押されたエネルギーが溜まり、プレートの岩盤がその力に耐えきれなくなったときに崩壊を起こして地震が発生するという仕組みになっています。

このようにプレートの衝突を原因とする地震は特に「プレート境界型地震」(海溝型地震)とよばれています。

プレート型の地震で有名なものとしては、1923年に発生した「関東大震災」や2011年の「東日本大震災」が挙げられます。

このプレート型の地震では海溝における断層のズレがきっかけとなって「津波」が引き起こされることも特徴です。

また、地震には内陸にある「活断層」のズレがきっかけとなって引き起こされる「内陸型地震」があります。

活断層とは一定の時間をおいて繰り返しズレを起こす傾向のある断層のことなのですが、活断層は大陸の内部にあるもののプレートの大地を押す力の影響を受けています。

内陸型地震の場合は、地下の岩盤が押されたり逆に引かれたりする力によって活断層のズレが引き起こされ、それがきっかけとなって地震が発生します。

1995年に発生した「阪神・淡路大震災」は典型的な内陸型地震で、兵庫県の淡路島にある野島断層という活断層のズレによって引き起こされたものです。

なお、この内陸型地震は地下の比較的浅いところで発生する地震であることから「直下型地震」ともよばれ、地震の規模が小さくてもその被害が大きくなりやすいという特徴があります。

さらに、「火山性地震」というマグマの活動によって発生する地震というものも存在します。

これは高熱のマグマが地上に向かって動くことによって周囲の圧力が上昇し、その影響で岩盤が割れて地震が発生するというメカニズムになっています。

「震度」と「マグニチュード」

さて、地震と切っても切り離せないのが「震度」と「マグニチュード」です。

テレビなどの地震速報が出てきたときにこの2つの数値が伝えられることが多いのですが、それぞれ何をあらわしているのか分かるでしょうか?

まず、震度は「ある場所で感じる地震の揺れの大きさ」のことをあらわしています。

当然のことですが、地震は震源に近ければ近いほど揺れが大きくなり、遠い場所ではその揺れは小さくなってきます。

この震度については「震度0、1、2、3、4、5弱、5強、6弱、6強、7」という全10段階になっており、各地の地震計に記録された加速度から算出されています。

なお、この震度の詳細については、こちらの気象庁ホームページの「震度について」のページを参照してください(リンクをクリックで別ウィンドウ表示)。

次に、マグニチュードとは「地震そのもののエネルギーの大きさ」のことで、その地震の規模をあらわしています。

震度と違ってこのマグニチュードはその地震のエネルギーや規模をあらわすものですので、この数値はある地震に対してひとつの数値しか存在しません。

とはいえ、地震のエネルギーの大きさについては体感では分かりにくいものですので、以下に主な地震とそのマグニチュードを記載します。

M6.8 新潟県中越地震(2004年)
M7.3 阪神・淡路大震災(1995年)
M7.9 関東大震災(1923年)
M9.0 東日本大震災(2011年)
M9.1 スマトラ島沖地震(2004年)
M9.5 チリ地震(1960年)

マグニチュードのエネルギーの大きさは、その値が2つ増えると1000倍になるものとして定義されていますので、1増えると$\sqrt{1000}$倍、すなわち約31.6倍のエネルギーの大きさの違いになります。

たとえば、2011年に発生した「東日本大震災」(M9.0)のエネルギーは、「阪神・淡路大震災」(M7.3)の地震の約1000倍にあたる地震規模だったということが分かります。

地震の危険性とその役割

阪神・淡路大震災や東日本大震災で私たちが経験したように、地震は揺れによる建物や家屋の倒壊だけでなく、津波が引き起こされることで私たちの生活にも非常に大きな影響を及ぼします。

日本はプレート同士が衝突している境界に囲まれているために地震の発生と常に隣り合わせの環境にあり、実際、約10年に1回はマグニチュード8クラスの地震が起こるといわれています。

そのため、地震への対策としては自分がどういう地層の上に生活をしているのかや建物がどういった場所に建っているのかといった地学的な関心を持った上で適切な行動を取ることが大変重要だといえます。

なお、地震は主にその災害の部分に意識が向きがちですが、地学的な観点から見た地震には実は非常に重要な役割があります。

それは大地の「隆起」に関わる現象です。

たとえば、私たちの身の回りにある山や大地は、降った雨や川の流れによって「侵食」という形で常に削られ続けていっています。

水は高いところから低いところへ流れ続けるため、この水による侵食が続くと大地は削られきってやがてなくなってしまうはずですが、そうはなっていません。

この侵食に対して大地を上方に隆起させる役割を担っているのが、地震による断層運動とよばれるものです。

大地は100年あれば断層運動によっておおよそ1m程度上昇することが知られていますが、その背後には断層のズレ、すなわち地震による地殻変動が常に関係しています。

つまり、現在の私たちが目にしている山や大地は、侵食と地震による断層運動の結果としてそこにあるというわけです。