「横倉山」を探訪する――日本最古の化石の産地

みなさんは日本でもっとも古い化石がどこで採れるかをご存知でしょうか。

それが高知県にある「横倉山」(よこくらやま)なのです。

今回は、私の大学時代によく訪れては化石を採集してきた横倉山についてご紹介していきましょう。

横倉山における化石採集ポイント

横倉山は高知県高岡郡越知町にある山で、日本の歴史においても源平合戦の後に落ち延びた幼帝・安徳天皇が余生を過ごしたという伝説が残る場所でもあります。

この横倉山は、日本においてもっとも古い古生代シルル紀の化石を産出する場所として知られています。

それまで日本の地質学では3億年前後の古生代デボン紀がもっとも古い地質時代とされてきたのですが、この横倉山の4億年前のシルル紀の化石が発見されたことによって、日本の地史をさらに1億年以上さかのぼることができるようになったという意味で非常に重要な場所といえるのです。

ただ、どこでその化石が採れるのかというジャストポイントについては知る人ぞ知るというところですので、実際にその場所をご案内しましょう。

まず、横倉山の入口には安徳天皇を祀った横倉宮に至る鳥居があり、ここから車で山道を登ることができます。


横倉山の入口

山道を登っていくと、頂上付近にある第2駐車場の少し手前に鳥居を見つけることができますので、この石の階段を徒歩にて登っていきます。


横倉山山頂近くの鳥居

石の階段からはかなりの勾配がありますが、その先を進んでいくと夫婦杉があり、その夫婦杉を過ぎた先を左に曲がって進みます。


横倉山の夫婦杉

そうすると、大小さまざまな岩石がたくさん転がっている場所を見つけることができます。



横倉山の化石採集ポイント

このポイントこそが、日本最古の古生代シルル紀の化石が手で拾って採ることができる場所なのです。

横倉山の地質的特徴と化石の採集

横倉山の地質的な特徴として、シルル紀の「土佐桜」といわれるピンク色がかった石灰岩で構成されていることが挙げられます。


横倉山の「土佐桜石灰岩」

この土佐桜石灰岩と横倉山の化石の特徴については、以下の動画で説明をしていますので、ご覧ください。


横倉山の地層と化石の特徴
(画像をクリックで動画を再生)

この石灰岩には古生代シルル紀を代表する、三葉虫、クサリサンゴ、ハチノスサンゴ、ウミユリなどの化石が数多く含まれています。

私の学生時代には大学の指導教授が地質巡検として私たち学生を引き連れて現場での実習指導を行い、石灰岩に含まれたさまざまな化石を採集していました。

特にこの石灰岩は長い年月を経ると岩石の風化が進み、岩石の表面に化石だけがはっきりと残る形であらわれることが特徴です。

実際、このポイントでは、以下のような化石を採集することができます。



横倉山で採集された化石(ハチノスサンゴ)

残念ながら、横倉山は化石の産地としてとても有名になったためか入山しては採集され続けているため、現在では化石の採集は禁止されています。

しかし、ここ横倉山は日本最古の化石に比較的容易に触れるための最適の場所だといえるでしょう。

化石の発見によって日本の地史が変わる

地学の授業をしていると、「なぜ海の底にいるはずの生物の化石が山の上に存在しているのか?」という質問を受けることがあります。

日本列島そのものは長い年月をかけてプレートの動きによって海底にある土砂や堆積物が大陸側に積み重なっていく「付加体」(ふかたい)として形成されています。

その付加体は断層運動によってさらに上昇して大陸が形成されていくため、そこに海の底に棲息していた生物の化石があるのはある意味当たり前のことだといえます。

ただ、日本において古生代シルル紀の化石が発見できたということは、その時期に日本に対してどのようなプレートの活動があったのかを知る手がかりとなるわけです。

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