砂金の調査記録(8)――京都府南丹市日吉町の砂金

日本においてどの川で砂金が採れるのかという本研究所のフィールドワークの調査報告です。

今回は、京都府南丹町の桂川上流における砂金の産出状況に関する調査を行いました。

京都府南丹市日吉町の砂金

「桂川」といえば京都府でも有名な河川のひとつとして数えられます。

その桂川の上流には流紋岩が含まれた火山岩の山地があり、その周辺には砂金が採れる場所が存在しています。

今回の調査では、その桂川の上流域にあたる「京都府南丹市日吉町」付近を探索し、砂金の産出の実態に関する検証を行いました。

具体的な場所としては、「日吉ダム」の下流域にある「殿田ふれあいパーク」の南方に位置する桂川の河川敷です。

この場所には以下の写真のようないくつかの基盤岩が顔を出しています。




桂川上流域の基盤岩

この基盤岩の上には水草が点在していることから、早速「草の根引き」を行い、その中の土砂を取り出してパンニングを試みました。



基盤岩から採集した水草

約1時間ほどの作業を行いましたが、まったく砂金を採ることができませんでした。

その理由について考えてみたのですが、この草の根引きを行った際に気になったこととして、その草の根に付着している土が非常に柔らかかったということが挙げられます。

その事実をふまえると、「この基盤岩では草の根引きの方法では砂金が採れないのではないか」という結論に至ったのです。

「草の根引き」のデメリット

一般に、砂金を含む草の根に付着している土は長い年月をかけて非常に固くなっており、その草の根に付いた土を取り出そうとする場合にはかなりの力が必要となります。

しかし、この基盤岩の草の根の土は非常に柔らかく、容易に草の根に付いた土を取り出すことができました。

これは逆にいえば、草の根が生えてから時間がそれほど経過していないことのあらわれといえます。

実は、この場所は一時期砂金が採れる「知る人ぞ知る」場所として非常に有名になったところです。

河川で砂金を採ろうとする場合、「草の根引き」は誰もが最初にチャレンジする簡便な方法だといえます。

おそらく、私たちがこの場所を訪れるよりも前に何人もの人たちが草の根引きを行い、砂金が取り尽くされたのではないかと思われます。

その後、時間が流れて基盤岩の上に再び草の根が生えてきたものの、そこには砂金が溜まるほどの長い時間は経過しておらず、そのために土が柔らかかかったのではないかとの仮説が成り立ちます。

このように、草の根引きは砂金採りの初心者にはおすすめの方法といえますが、多くの人が草の根引きをしてしまうとそこでは砂金を採ることができなくなってしまいます。

つまり、数ある砂金採集ポイントの中で、一時期有名になった場所では「草の根引き」は使えない方法となってしまうのです。

砂金が含まれるポイントを正確に突き止める

砂金を採るための方法として草の根引きの次に試すのは「盤たたき」というやり方になります。

これは草の根引きに比べてやや難しく、「どこに砂金が溜まっているのか」「どの岩盤を割るべきなのか」という砂金が含まれているポイントを正確に見極めるスキルが求められます。

特に、岩盤の岩石は大きくて重たいために、それを動かすためにはかなりの力が必要となるため、砂金が含まれているポイントを正確に把握できなければその作業自体が徒労に終わってしまいかねません。

この盤たたきを行い、岩盤の中に含まれている土砂を取り出してパンニングしたところ、以下のような2~3mmの大きさの砂金を採集することができました。


採集された砂金

なお、盤たたきを終えた後にはそこに岩盤の穴のようなものができますが、そこは砂金が溜まるような「自然のトラップ」としての役割を果たすことになります。

大きな洪水が発生したときには上流から流されてきた砂金がその岩盤の穴に溜まりますので、その土砂を取り出すことでさらなる砂金を採集することが可能となります。

今回ご紹介した砂金の採集場所はこれまでにも何度も人が訪れて砂金の採集が試みられたところだと思われます。

そのため、「砂金が採れる場所」としては間違いないところといえますが、実際にその場所で砂金が採れるかどうかについてはその人自身の物事の見え方や捉え方、砂金を採るためのスキルが求められるといえるでしょう。

以上のことから、今回ご紹介した砂金採集ポイントは、初心者よりもある程度砂金採集のスキルを身につけた中級者向けの場所といえるのかもしれません。