地質図の特徴と活用法――大地の地層と岩石を知る

みなさんは「地質図」というものをご存知でしょうか。

おそらく、一般の人にとってはほとんどなじみのないものだと思いますが、私のような地学を専門としている人間にとって地質図は非常に重要な手がかりを与えてくれる大切なものだといえます。

今回は、この地質図について取り上げ、その特徴や見方、活用法などについてご紹介していきましょう。

地質図の特徴と活用法

まず、地質図とは何かですが、これはその名のとおりある地域の土地がどのような岩石や地質的特徴でできているかを示した地図になります。

具体的には次のようなものになります。

大きさとしては、タテ 545mm × ヨコ 785mmですので、おおよそA1サイズを一回り小さくしたものになります。

地質図の縮尺にはいくつかの種類があるのですが、広域のもので20万分の1、詳細なものであれば5万分の1が一般的で、日本全国の地域ごとにこのような地質図が存在しています。

この地質図では、主に山にあたる部分にさまざまな色と記号が用いられており、その部分がどのような岩石でできているのかが分かるようになっています。

逆に、地質図では私たちが生活している住宅や道路、田畑など部分は白色で色が塗られていないため、地層や岩石といった地質的特徴に注目した地図だといえます。

この地質図における色分けと記号の対応については、左側に掲載されている「凡例」の部分を見ることでそれぞれがどのような地層や岩石に対応しているのかが分かるようになっています。

この凡例の部分には地層や岩石の色分けだけでなく、それらがどの時代に相当するものなのかという地質時代の区分についても示されており、下側が「古生代」などの古い時代、上になればなるほど新しい時代となるように並べられています。

なお、岩石の色分けについては、古い時代にはより濃い色を用い、現代に近い新しい時代になればなるほど薄い色を用いるという規則があり、JIS規格(日本工業規格)によってそれがある程度定められています。

地層・岩体を示す色
地層・岩体を構成する岩石
れき岩(礫岩) 茶色系統
砂岩 黄色系統
泥岩 青又は緑系統
砂岩泥岩互層 黄緑(砂岩と泥岩との中間色)
チャート だいだい色(橙色)系統
石灰岩 青系統
酸性又はけい長質(珪長質)火砕岩 桃色又は赤系統
酸性又はけい長質(珪長質)火成岩 桃色又は赤系統若しくは茶色系統
塩基性又は苦鉄質火砕岩 紫系統又は緑系統
出典:「地質図-記号,色,模様,用語及び凡例表示」(JISA0204)

この岩石以外にも、JIS規格では地質時代の色分けや記号、名称の記載の方法などが細かく定められています。

また、色分け以外にも地質図ではさまざまな断層が線として記載されている他、その地域を横から見た断面図というものも掲載されています。

この断面図を見ることで、その地域全体がどのような地層や岩石で構成されているのかを知ることができるわけです。

さて、この地質図を作成するにあたっては、地学や地質関係に精通した専門の調査員が実際にその土地を歩きながら地層や岩石をサンプリングし、それらのデータをまとめたものとなりますので、非常に膨大な時間と多大な労力がかけられています。

この地質図を見ることによって、たとえば、私のような地学を専門とする人間であれば化石や鉱物、岩石を採集する際に、あらかじめどの部分にそれらがあるのかを目安にすることができます。

また、地質図は土木・建設関係の人びとにとっても非常に重要な手がかりを与えてくれるものとなります。

トンネルを掘ったり、ダムや原子力発電所を建設したりする土木・建設関係では、その地域がどのような岩石や地層でできているのかをあらかじめ知っておかないと、建設後にその土台や施設・建物が傾いたり長期間にわたる使用に耐えられなかったりするおそれが出てきます。

そのため、地質図は土地を活用する多くの産業やそこに関係する人びとにとってはなくてはならない地図だといえるでしょう。

「地質図カタログ」と「地質図Navi」を活用する

以上のような特徴をもつ地質図なのですが、おそらく一般の方がそれを見る機会はほとんどないと思います。

いわゆる普通の日本全国地図や地図帳であればどの書店でもたいてい置いてありますが、この地質図についてはかなり大きな書店でも取り扱っているかどうかというものです。

では、私がどこでこれらの地質図を手に入れたのかというと、これは地域ごとの地質図が一枚ごとに販売されており、自分の欲しい地域の地質図を専門の業者から購入する必要があるのです。

私の場合、四国の大学に通っていてその周辺の地域をフィールド調査の対象としていたことから、四国や兵庫県のものを多く所有しています。

また、教師になってからも化石や岩石などのフィールド調査が必要なときには、その地域の地質図をその都度購入してきたということになります。

その意味でも、地質図は専門家しか見ることのない地図だといえるでしょう。

しかし、そのような地質に関わる専門家しか手にすることのなかった地質図についても、インターネットをはじめとする情報化が進むにつれて、一般の方でもそれを自由に閲覧できる時代になりました。

それが次に紹介する「地質図カタログ」と「地質図Navi」になります。

これまで説明してきたように、地質図は主に地質や地学を専門とする人びとが使用するものだったため、一般の方が手に入れて利用することは難しいものでした。

ただ、現在ではインターネットが発達するにつれてこの地質図についてもデータベース化が進められてきており、こちらの産業技術総合研究所の地質調査総合センターのサイト内にある「地質図カタログ」のページでは、これまで日本で発行されてきた地質図をすべて無料でダウンロードして閲覧・利用することができます。

もともと地質図というものは何年かごとに更新がされるもので、最新版の地質図を手に入れるためにはその都度購入する必要があったのですが、それが常に無料で手に入れられることは大変な時代の進歩だと思います。

また、同サイトでは、「地質図Navi」というGoogleマップの地形図の上に地質図のデータを重ねたシームレスで表示可能なシステムも公開されていて、こちらも無料で利用することができます。

もともとGoogleマップでは地図の拡大・縮小などをマウス操作によってシームレスに行えるシステムが使われていますが、地質図Naviではその操作と似たような感覚で地質図の情報が扱えるようになっています。

また、同サイトでは一般的な地質図だけでなく、「海洋地質図」や「火山地質図」、「構造図」など、いろいろな種類のものも表示・閲覧することができます。

以上の地質図はすべてデータとしての提供ですので、紙の地質図のように野外に持っていって参照する使い方はできませんが、自分の知りたい地域の地質図をあらかじめ閲覧する際には非常に有用だといえるでしょう。

その他、地質図の特徴や見方については、こちらの産業技術総合研究所の地質調査総合センターにおける「地質図を知るページ」でも詳しく説明されていますので、あわせて参照してください。

地質図の重要性

今回は、地質図について取り上げて、その特徴と使い方について紹介してきました。

私はこれまで地学を専門としてきたため他の人に比べて地質図に触れる機会も多くありましたが、その地質図を一枚一枚購入していたことを考えれば、現在ではそれがインターネットで無料で誰でも利用できるので、本当によい時代になったと思います。

その背景には、やはり阪神・淡路大震災や東日本大震災といった災害とその防災という意識の高まりが大きなきっかけになっているといえます。

こちらの「私たちの生活の基盤を知る――災害を未然に防ぐための知恵」のページでも解説したように、自分がどのような地層や地質的特質をもった大地の上で生活しているかをあらかじめ知っておくことは、自然災害などから身を守るための非常に重要な手がかりになるといえます。

みなさんも、ぜひ、「地質図カタログ」や「地質図Navi」などのページを通して自分の住んでいる周囲の地層や岩体などを見てみてください。

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